局所放射線照射によりがん抗原が放出され、樹状細胞がT細胞に抗原を提示してT細胞を活性化し、放射線照射部位以外の病巣も縮小する、アブスコパル効果と呼ばれる現象が知られている。肺癌においても放射線照射が免疫療法の効果を高める可能性が期待される。本研究の目的は、未治療の進行非小細胞肺癌患者を対象として、初回の薬物療法(免疫療法+殺細胞性抗癌剤)開始前に姑息的な放射線照射を施行した際の免疫応答を臨床効果と紐づけて解明することである。 初年度は計画通りに検体の採取作業を行った。薬物治療(免疫療法+殺細胞性抗癌剤)開始前に姑息照射を施行した13症例について、治療前・治療中の血液検体をそれぞれ採取した。血漿は-80度で保存し、末梢単核細胞(PBMC)を分離し、Trizolもしくは培養液で処理をして保存した。姑息照射を行わず薬物療法のみの症例についてもコントロールとして検体を採取し、同様の方法で保存した。 次年度は免疫療法と殺細胞性抗癌剤に姑息照射を追加した施行した13症例と薬物療法のみの6症例の治療開始前後の血漿と末梢血単核細胞を解析した。末梢血単核細胞中の細胞分画やサイトカイン、Damage-associated molecular patterns(DAMPs)を比較検討したが、統計学的、臨床的に有意であると考えられる因子を同定することができなかった。 最終年度は、奏功例13例と非奏功例6例を比較検討し、奏功群では治療前血液中のNK細胞、CD4陽性PD-1陽性Tim3陽性細胞、CXCL10が有意に上昇していた。さらに、これらの組み合わせるとより良い精度で効果予測ができることを見出した。 現在、論文投稿中である。
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