第3世代のEGFRチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)であるオシメルチニブは、EGFR変異肺癌に対し、第1・2世代EGFR-TKIよりも有意に高い奏効率を得られるだけでなく、全生存期間を延長することが示されている。また、中枢神経系(CS)病変に対する有効性も高いことが知られている。しかし、長期治療によりオシメルチニブ耐性を生じ、脳転移や髄膜癌腫症(LMC)などCNS病変が出現し治療に難渋する。EGFR肺癌のLMCに注目し、LMCにおけるオシメルチニブ耐性機構を解明し、耐性を克服する治療法を見出すことを目的として研究を進めた。 ゲフィチニブ耐性後オシメルチニブにも耐性化したLMC in vivo イメージングモデルから樹立したがん細胞株(G-OR#2)より、次世代ゲノムシークエンサー(NGS)においてKRAS-G12V変異を検出した。この細胞株を用いてsiRNAによるKRASノックダウンを行ったところオシメルチニブへの感受性が回復した。G-OR#2細胞株にオシメルチニブとMEK阻害薬であるトラメチニブを併用すると細胞増殖抑制効果を認めた。in vivoにおいても効果を確認するため、G-OR#2細胞株を髄膜播種させたLMC SCIDマウスモデルを作製した。マウスLMCモデルにおいてもオシメルチニブとトラメチニブを併用すると有意な生存期間延長を確認した。なお、有害事象に有意差は認めず毒性は許容できるものと考えられた。 これらのことから、オシメルチニブ耐性EGFR変異肺癌LMCにおいてKRAS-G12V変異を認める場合にはMEKをターゲットとした治療戦略が有用である可能性が示唆された。
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