研究課題/領域番号 |
20K17217
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
赤嶺 孝祐 大分大学, 医学部, 助教 (60799435)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ARDS / 血管透過性 / ROCK |
研究実績の概要 |
ARDS(acute respiratory distress syndrome,急性呼吸促迫症候群)は肺胞の血管内皮細胞障害により血管透過性が亢進し、血液液体成分が肺胞内へ漏出・貯留する(非心原性肺水腫)ことで起こる予後不良かつ死亡率の高い疾患である。本来、血管透過性の亢進は炎症などに対する防御反応として免疫細胞や血漿成分の血管外移動に寄与するが、過剰な亢進は種々の疾患の病態と密接に関連している。これまでに血管透過性に寄与する多くの分子が同定されており、低分子量G蛋白質Rhoもその1つである。Rhoは下流標的蛋白質(ROCK, mDia)を介してアクチン細胞骨格の再編成を調節していることが培養細胞を用いた解析で明らかとなっている。本研究では、肺でのROCKの血管透過性調節機構への寄与とその分子機序を解明し、ARDSの病態理解を深めることで新たな治療法開発の基盤を作ることを目的としている。本年度は、以下の成果が得られた。ROCK1/2ダブルノックアウトマウスの気管支肺胞洗浄液(BALF)を解析したところ、ROCKノックアウトによりBALF中の好中球が有意に増加していること、マクロファージが活性化していることが明らかとなった。また、BALF中のIL6やCCL2などのサイトカインの有為な上昇も認められた。さらに、ROCK1/2ダブルノックアウトマウス肺を用いてマイクロアレイやリアルタイムqPCRにより遺伝子解析を行ったところ、ROCKノックアウトによりNF-κBシグナルの活性化が認められた。このことからROCKがNF-κBシグナルの制御を介して血管透過性調節に寄与することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ROCKがNF-κBシグナルの制御を介して血管透過性調節に寄与することが示唆されたが、In vitroでその詳細を明らかにするための実験系構築に時間がかかっている。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度および本年度の結果からROCK1/2ダブルノックアウトマウス肺において血管内皮細胞接着因子の発現量低下を伴う血管透過性の亢進が認められた。このROCKノックアウトによる血管透過性の亢進は、NF-κBシグナル活性化を介したIL6やCCL2の分泌増加、それらのサイトカインによる肺への好中球の誘因や肺胞マクロファージの活性化に起因することが示唆された。今後は、ROCKノックアウトからサイトカイン分泌までの分子メカニズムを中心にIn vitroでその詳細を明らかにする予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
In vitro実験系構築に時間がかかってしまい、その分に使用する試薬費を次年度使用分として計画している。
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