研究課題
下気道のC繊維終末に発現するTRPV-1受容体を介した気道知覚神経過敏と喘息病態の関連が報告されており、カプサイシンに対する咳応答の亢進(以下、カプサイシン咳感受性亢進)は気道知覚神経機能不全を反映する指標と考えられている。難治性喘息の病態を反映するバイオマーカーとしてカプサイシン咳感受性に着目し、本研究を通じて難治性喘息におけるカプサイシン咳感受性の意義を明確にすることを本研究の『問い』とした。本年度は、重症喘息患者における、1.生物学的製剤による喘息性咳嗽とカプサイシン咳感受性に対する効果、2.気管支熱形成術による喘息性咳嗽とカプサイシン咳感受性に対すること効果を検討した。高用量吸入ステロイドを中心とした抗喘息治療を行っていても頻回に全身ステロイド投与が必要になる例や入院が必要になる例が存在し、こういった例では生物学的製剤や気管支熱形成術が適応となる。1.については、後方視的に生物学的製剤の導入前後における咳症状、喘息コントロールの改善とカプサイシン咳感受性の変化について検討を行った。カプサイシン咳感受性は抗IL-5経路を標的とした薬剤で有意に改善し、その程度は咳関連QoLの改善の程度と相関することを示した。また、カプサイシン咳感受性改善に寄与する因子として、導入前末梢血好酸球高値が抽出された。2.については前向きに症例集積を行い、咳優位型喘息例では全例咳症状の改善、カプサイシン咳感受性の改善を認めた。咳関連QoLの改善の程度は気管支熱形成術によるカプサイシン咳感受性の改善の程度と相関を認めた。以上から、カプサイシン咳感受性の亢進は重症喘息の治療標的となることを示した。
2: おおむね順調に進展している
今年度は重症喘息における治療法がカプサイシン咳感受性亢進の改善に有用であることを報告することができた(Ito K, Kanemitsu Y, et al. Targeting the interleukin-5 pathway improves cough hypersensitivity in patients with severe uncontrolled asthma. Ann Allergy Asthma Immunol 2023, 203-208.、Nishiyama H, Kanemitsu Y, et al. Bronchial thermoplasty improves cough hypersensitivity and cough in severe asthmatics. Respir Med 2023. 107303)。
カプサイシン咳感受性亢進に関連するバイオマーカーの探索を継続中であり、IL-33に加え、胆汁酸に着目している。血清胆汁酸と咳感受性、喘息性咳嗽との関連について評価中である。
現在、血清胆汁酸を解析中である。また、カプサイシン咳感受性亢進と喘息増悪の季節性の関連についても検討することを考えている。
すべて 2023
すべて 雑誌論文 (3件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)
Respiratory Medicine
巻: 216 ページ: 107303~107303
10.1016/j.rmed.2023.107303
Annals of Allergy, Asthma & Immunology
巻: 131 ページ: 203~208.e1
10.1016/j.anai.2023.04.022
アレルギー
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