研究実績の概要 |
2型自然リンパ球(ILC2)はステロイド抵抗性の好酸球炎症を誘導し、重症喘息の病態に関与している可能性が示唆されている。申請者のグループは以前IL-27がILC2の強力な抑制因子であることを発見した。今回我々は、IL-27を介して喘息病態を抑制する最適な方法を見出すことを目的とした。 パターン認識受容体であるToll-like receptor(TLR)の免疫調整作用は、喘息の新たな治療戦略として注目されている。我々は、ウイルスのssRNAを認識するTLR7のアゴニストが生体内でIL-27を誘導することをマウス実験で発見した。マウスにIL-33を点鼻投与するとILC2を介して著明な好酸球性気道炎症が誘導される。このモデルにTLR7アゴニストであるR848を単回投与すると、気道や肺組織に集積する好酸球、ILC2は有意に減少した。ILC2はIL-5, IL-13を産生することで、好酸球性気道炎症や杯細胞過形成を惹起するが、R848投与群では、BALF中のIL-5, IL-13及び病理組織で評価したムチンスコアが有意に低下した。更に、R848投与群では気道過敏性が非投与群と比較して有意に低下した。また、IL-33の投与によりTLR7を高発現する間質マクロファージ(IM)が増加し、単離したIMはR848の刺激でIL-27を産生することを発見した。IMとILC2の共培養ではR848刺激下でILC2の増殖、サイトカイン産生を有意に抑制することが明らかになった。更に、IL-27受容体ノックアウトマウスではR848の投与によるILC2の抑制効果が消失し、TLR7のアゴニストによるILC2の抑制にはIL-27が重要な役割を担っていることを証明した。
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