研究実績の概要 |
近年,新たな創薬のターゲットとしてエヒシェネティック機構が注目されており,特にBET(Bromodomain and Extra- Terminal)蛋白質は線維化との関連性が示唆されている.本研究では特発性肺線維症における肺線維化のメカニズムを解明し, 抗線維化作用を有する新規薬剤の創薬につながる研究を行う事を目的とする.我々は次世代の抗線維化薬として新規BET(BRD4)阻害剤OTX015の可能性に着目した. 正常肺より採取した線維芽細胞を用いて,TGFβ1により刺激した細胞とTGFβ1刺激及びOTX015を投与した細胞よりRNAを抽出,マイクロアレイ解析を行い,両者を比較したところ,NOX4等の発現変動遺伝子が挙げられた. 我々は胎児肺由来線維芽細胞を用いた生理機能活性解析(コラーゲンゲルコントラクションアッセイ,ケモタキシスアッセイ)を行い,TGFβ1投与下/非投与下で,NOX4阻害薬によるコラーゲンゲル収縮抑制及び遊走能が抑制されることを証明した.また同細胞を用いたウエスタンブロット法によるタンパク発現解析により, TGFβ1刺激で発現亢進したFibronectinやα-smooth muscle actinは, OTX015及びNOX4阻害薬を投与することにより両者とも優位に抑制された. TGF-β1刺激下でOTX-015投与によりNOX4のタンパク発現は抑制されたが,NOX4阻害薬ではBrd4の発現は抑制されなかった.またブレオマイシン肺線維症モデルマウスにおいても, NOX4阻害薬投与により肺線維化(Ashcroft score)が優位に抑制されることを証明した.以上の結果よりBRD4阻害薬及びNOX4阻害薬は抗線維化作用を有しており、BRD4阻害薬はNOX4の阻害を介して抗線維化効果を発揮している可能性がある.
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