研究課題/領域番号 |
20K17228
|
研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
杉本 直也 帝京大学, 医学部, 助教 (40724175)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 肺線維化 / IL-9 / BEAS2B / サイトカイン |
研究実績の概要 |
肺線維化の病態研究に利用されるシリカモデルにおいて、以前我々は慢性進行期の肺線維化におけるIL-9の重要性を明らかにした。IL-9抗体で線維化と、肺局所における様々な液性因子が抑制された。さらに、ヒトIPF検体でも、IL-9陽性マクロファージが増加し、肺胞上皮細胞ではIL-9受容体が高発現していることが示され、ヒトIPFにおいても、IL-9が線維化機構における重要な役割を担っていることが示唆された。しかしながら、肺線維化におけるIL-9の機能の全貌は明らかになっていない。 本研究では、IL-9が肺線維化に及ぼすメカニズムをさらに詳細に明らかにするために、IL-9が肺構築細胞や炎症細胞に及ぼす影響を検討する。 肺線維化には、気道上皮細胞の上皮間葉転換 (Epithelial mesenchymal transition (EMT))の関与が示唆されている。また、上皮細胞は向線維化成長因子の産生源としても重要である。しかしながら、気道上皮細胞のEMTや向線維化因子産生にIL-9が及ぼす影響については報告がない。2020年度は、まずIL-9が気道上皮細胞に及ぼす影響を検討した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
気道上皮細胞であるBEAS-2BをIL-9で刺激し、向線維化因子 (PDGF, IGF, CTGFなど)産生、サイトカイン (IL-33: ILC2活性化因子)産生をmRNAレベルで検討した。また、EMTへの関与を検討するため、vimentinやcadherin mRNA発現を検討した。 気道上皮細胞培養、real-time PCRの系は安定して稼働している。気道上皮細胞に対するIL-9の効果の用量依存性は現在十分確立していないため、annexin-Vとpropidium iodideを用いて細胞生存への影響も基礎検討として行っている。 全てのターゲット因子に対するprimerの準備は完了し、発現解析に着手している。EMT関連の分子がIL-9刺激で増強する可能性があり、検体数を増やして検討中である。 2020年度はIL-9の効果をマクロファージまで検討する予定であったが、現状気道上皮細胞まで進行しているため、やや遅れていると評価した。実験系は確立しており、このまま計画を進行する。
|
今後の研究の推進方策 |
予定通り、IL-9が気道上皮細胞に及ぼす影響の検討を終了させる。また、今後はIL-9がマクロファージに及ぼす効果の検討も行う。Cell line (RAW 264.7)を用い、IL-9で刺激したマクロファージからの向線維化因子 (PDGF, IGF, CTGFなど)や細胞外マトリクス (MMP)産生をmRNA、蛋白レベルで検討する。 また、我々の検討で、ヒトIPF肺のマクロファージがIL-9産生細胞であることが示唆された。IPFにおけるマクロファージからのIL-9産生のトリガーは不明であるが、まずシリカやLPS刺激を加え、IL-9の発現をmRNA, ELISAで検討する。産生を確認できれば、IL-9Rの下流にあるシグナル分子阻害薬を用いて、シグナル経路の検討を行う。まずcell line (RAW 264.7)を用いて検討し、さらに、生体由来マクロファージでも同様の産生と調節が認められるかを検討する。 間質性肺疾患患者の血清IL-9濃度を測定し、病型、呼吸機能との相関や、KL-6等との相関を検討し、バイオマーカーとしての有用性を検討する。このために、当院の倫理委員会に研究計画の申請を準備している。
|
次年度使用額が生じた理由 |
ヒト気道上皮細胞(BEAS2B)を用いたEMTに関連する因子の検討を行い、mRNA発現の確認実験はできたが、実験の遅れのため予定していたタンパク質の定量解析はまだできておらず、使用額が使用計画を下回った。 今後は、さらにマクロファージを用いてIL-9の作用を解析するため、細胞やさらなる遺伝子発現、タンパク定量解析を行う為の試薬や実験器具等の物品費に次年度に使用する予定である。
|