研究実績の概要 |
肺線維化の病態研究に利用されるシリカモデルにおいて、以前我々は慢性進行期の肺線維化におけるIL-9の重要性を明らかにした。今回、IL-9が気道上皮細胞に及ぼす影響と、マクロファージとIL-9の相互作用による線維化機構への関わりを検討した。 まず、気道上皮細胞であるBEAS-2BをIL-9で刺激し、向線維化因子をmRNAレベルで検討したところ、PDGF-AA, PDGF-BB, IGF-1, CTGF, IL-33の亢進が見られた。また、EMTに関わるvimentinやcadherinのmRNA発現の亢進もみられた。 さらに、THP-1細胞およびU937細胞を用い、M1およびM2への分化を誘導し、シリカを加えてサイトカイン産生について検討した。 THP-1細胞をLPS & IFN-γで刺激し、シリカを添加すると濃度依存的にIL-1β, TNF-αのmRNA発現は亢進していた。CCL17, CCL26もシリカ高濃度でmRNA発現が亢進していた。次にIL-4&IL-13で刺激した場合、LPS & IFN-γと同様の結果であった。しかしながら、IL-9のmRNA発現は検出できなかった。一方、U937細胞では、LPS & IFN-γの刺激とシリカ添加で、CCL17のmRNA発現は低下、IL-9は亢進、CCL26、IL-1β、TNF-αは不変であった。また、IL-4&IL-13で刺激すると、IL-9は亢進したが、CCL17, CCL26, IL-1β, TNF-αは不変であった。 今回、BEAS-2Bを用いIL-9刺激で向線維化因子産生、サイトカイン産生がmRNAレベルで確認できた。シリカで刺激したマクロファージの検討では、IL-9を含めたサイトカイン産生については、Cell lineごとの結果に違いがあり、解釈や再現性については今後も検証が必要と考えられた。
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