研究実績の概要 |
刺激因子の 2 型サイトカイン(IL-5, IL-4, IL-33)、1 型サイトカイン(TNF-alpha, IFN-gamma)の存在下で培養した健常者の血中好酸球を用いて RNA-seqを実施した.RNA-seq により発現上昇因子として、IL-5とIL-4に共通するGGT5、IL3RA、IL-5特異的なIL2RA、CCL23、IL-4特異的なTGM2、IL1RL1、IL-33とTNFに共通するC3、CCL4、IL1、IFN特異的な GBP、TRIMなどを同定した.同様の変化をプロテオミクスとフローサイトメトリーで確認し、これらの因子が蛋白翻訳後に機能的分子となりうることを示した. リピドミクスではIL-4とIL-5の刺激によりLTD4の産生量が相乗的に増加することを確認し、発現したGGT5などの脂肪酸代謝酵素が実際に脂肪酸代謝パターンを変化させ、特定の脂質メディエーターの産生に寄与することが証明した. 私たちが保有している鼻茸好酸球の遺伝子発現データを用いて、これらの刺激因子による変化が実際の炎症部位の好酸球で生じているかどうか検証した.IL-5, IL-4, IL-33, TNF-alphaによる変化と同じ遺伝子発現パターンの変化が複合的に生じていることが確認された.以上から、IL-5, IL-4, IL-33, TNF-alphaが病態に関与している可能性が示唆された.IL-33とTNF-alphaのシグナルの下流では酸化LDLの刺激に対する応答性の増強が生じる可能性を示した.IFNについてはIFN-gのシグナルが亢進し、IFN-aのシグナルが減弱している可能性を示した.本研究で同定された因子群の変化は副鼻腔炎、喘息などの様々なアレルギー疾患の複雑な病態の解釈に有用である可能性がある.
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