研究課題/領域番号 |
20K17241
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
牧野 慎市 千葉大学, 医学部附属病院, 医員 (40713649)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ポドサイト / ユビキチン・プロテアソーム / オートファジー / 質量分析 / p53 |
研究実績の概要 |
糸球体足細胞(ポドサイト)は血液蛋白の最終濾過機能を担っている。ポドサイトが障害を受けると血液蛋白が漏れ出して蛋白尿が生じる。障害が進行するとポドサイトは糸球体から脱落し糸球体硬化を引き起こし慢性腎臓病(CKD)が進行する。 ユビキチン・プロテアソームとオートファジーは細胞内の主要な蛋白分解機構であり、不要な蛋白の除去や、細胞内蛋白の発現量調節を担っている。 ポドサイトにおいては、ポドサイト特異的なオートファジー不全マウスは自然経過では腎不全には至らないが、ポドサイト特異的なプロテアソーム不全マウス(Rpt3pdKO)は4週齢より尿蛋白が生じ、8週齢には硬化糸球体数や血清クレアチニンの有意な上昇を認め、平均14週齢と若齢で腎不全により死亡する。 Rpt3pdKOマウスのポドサイトではプロテアソーム不全による分解できなかったユビキチン化蛋白がポドサイトに蓄積しており、またポドサイトにおいて酸化ストレスの増加やアポトーシスが観察された。培養ポドサイトにおいて、プロアソーム阻害剤である、ボルテゾミブを投与すると、ポドサイト特異的なプロテアソーム不全マウスと同様にユビキチン化蛋白が蓄積し、酸化ストレスやアポトーシスの増加が観察された。 またプロテアソーム機能不全がmTORの活性化を介したオ―トファジーの抑制も引き起こすことで、ポドサイト障害を増悪させていると考えられた。 ポドサイトに蓄積したユビキチン化蛋白を質量分析で解析し、熱ショック蛋白やDNA修復蛋白、またUPSとオートファジーのアダプター蛋白、いくつかの細胞骨格関連蛋白を同定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
千葉大学の共通機器室の質量分析機が使用できなくなり、質量分析を外部機関で行うこととなった。また、2021年6月に大学内で研究室を移転することになり、約半年間研究が中断した。
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今後の研究の推進方策 |
質量分析で同定した分子について、Rpt3pdKOマウスの腎組織の染色や単離糸球体を用いたウェスタンブロッティング、また腎疾患を持つヒトの腎生検検体の染色により、これらの分子の発現変化を確認する。さらに培養ポドサイトを用いてこれらの分子の発現をノックアウトあるいは過剰発現することでアポトーシスやオートファジーの抑制が引き起こされるかどうか検討する。このようにして、プロテアソーム機能不全により引き起こされるポドサイト障害に対して、これらの分子がどのように関連しているのか、そのメカニズムを明らかにしていく。
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