研究実績の概要 |
本研究は腎臓の集合管主細胞におけるバソプレシン受容体(V2R)の下流で働くアデニル酸シクラーゼ(ADCY)の構造解析をすることで、難治性疾患である腎性尿崩症(NDI)の分子治療標的の探索することを目的として行った。V2Rと共役するADCYとしてはADCY3,ADCY6,ADCY9が候補として挙げられた。ADCY9に関しては2019年にbovineのADCY9の構造が 報告されており、その発現精製方法を踏襲してhuman ADCY3、ADCY6、ADCY9の発現精製を試みた。過去の報告などから、特にV2Rとシグナルの下流で働くもので最も寄与率が高いと思われるのはADCY6であった。そこでhuman ADCY6の発現精製を特に重点的に行った。 まずはhumanADCY6遺伝子を合成しpFastBac, pFastBacMam vectorに導入、bacmidを作成、Sf 9+細胞を用いてバキュロウイルスを作成しそれぞれSf 9+細胞やExpi293細胞を用いて発現をおこなった。まずは既報のbovine ADCY9を参考に、C末端側にEGFPやHisタグを入れたコンストを作成して発現精製をおこなった。しかし発現が悪かったため、N末端側にEGFPやタグを入れたもの、EGFPを抜いたもの、他の9種類の哺乳類のADCY6の合成遺伝子を作成したもの、human ADCY9とのキメラを作成したもの、200種類の脊椎動物のADCY6の配列のconsensus配列から作成したコンストラクトなどを使用して発現精製を試みたがいずれもうまくはいかなかった。 human ADCY3に関してもC末端側にEGFPやタグを入れたコンストラクトを作成し発現を試みたがうまくいかなかった。 human ADCY9に関しては発現精製ができたためGsαとの複合体を作成し構造解析と論文化を進めている段階である。
|