研究課題
小児慢性腎臓病や末期腎不全はその原因の最多を先天性腎尿路異常が占める。そのうち末期腎不全を必発とする常染色体顕性多発性嚢胞腎で潜在的な腎内レニン・アンギオテンシン系の関連が示唆された点に注目し、各種先天性腎尿路異常例において腎内局所レニン・アンギオテンシン系の指標とされる尿中アンギオテンシノゲンを測定し各種臨床パラメーターとともに比較検討した。対象は片側多嚢胞性異形成腎9例、片腎6例とし、対照は年齢、性別をマッチさせた正期産児17例を健常コントロールとした。3群において背景因子(年齢、性、在胎週数、出生体重)に差はなかった。尿中アンギオテンシノゲン/Crは片腎例(3.0 μg/ng・Cr)、コントロール例(5.9)と比較し片側多嚢胞性異形成腎例(8.7)が有意に高値であった(p=0.004、p=0.01)。片側多嚢胞性異形成腎と片腎例を比較すると血清アンギオテンシノゲン、Cr-eGFR、腎長径に有意な差はなかった。高血圧合併例の割合は片側多嚢胞性異形成腎例、片腎例で差はなかったが(p=0.09)、収縮期血圧は片側多嚢胞性異形成腎例が有意に高値であった(111 vs 101 mmHg、p=0.01)。片側多嚢胞性異形成腎は腎内レニン・アンギオテンシン活性化との関連が示唆された。腎発生過程もしくは出生後経過のどちらに関与しているかは現時点では不明である。今後、片側多嚢胞性異形成腎の自然退縮過程を含めた腎内レニン・アンギオテンシンの経時的変化を評価する計画である。
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