研究課題/領域番号 |
20K17252
|
研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
水口 建 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 研究員 (30814511)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 腎尿細管スフェロイド / 3次元培養 / Na輸送 / アミノ酸輸送 / 虚血再灌流障害 / 低酸素 |
研究実績の概要 |
これまでの研究でHK-2細胞を3次元培養することによりヒト近位尿細管の実験モデルを確立するという目標を達成することができた。その過程でHK-2細胞の3次元培養モデルでは2次元培養モデルと比較してNa輸送能が活性化していることが判り、Na/アミノ酸輸送体であるSLC6A15がその一部を担っているのではないかというヒントを得ることができた。2022年度では、この点をさらに深く調べるためにSLC6A15に対してRNA干渉の実験を開始した。その結果、2D培養したHK-2細胞に対しては良好なノックダウン効率を得ることができたが、3D培養したHK-2細胞では十分なノックダウン効率を得られないことが判った。そこで3D培養に対するRNA干渉を実施するため、トランスフェクション方法やsiRNA濃度などの条件検討に時間を要している。一方、2022年度では本実験モデルを他の研究に活かすことはできないかと考えて、虚血再灌流障害モデルとしての使用可能性について検討した。その結果、2Dならびに3D培養したHK-2細胞では、低酸素環境下で培養することによりHIF-1αの発現を免疫蛍光染色やウェスタンブロット法で確認できた。また、通常酸素環境下に戻すことにより細胞死が起きることも確認することができた。興味深いことに3D培養では2D培養と比較して虚血再灌流後の細胞死が少ない傾向が認められ、低酸素ストレスに対して防御機構が新たに存在する可能性が考えられた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
3D培養したHK-2細胞に対するRNA干渉では導入効率を高めるために高濃度siRNAを使用すると細胞死が認められるなど、2D培養で行われている実験条件検討のみでは改善が難しいのではないかと考え始めている。そこで他の文献などを調べて改良法を検討中である。虚血再灌流障害モデルについては、3D培養したHK-2細胞には抗酸化物質が存在しているのではないかと考えてカタラーゼやスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)などの測定を開始して予備データ取得中である。
|
今後の研究の推進方策 |
虚血再灌流障害モデルに関する予備データを引き続き取得する予定である。過去に行なったRNAシークエンス解析の結果を振り返ると3D培養したHK-2細胞ではミトコンドリアに関連した遺伝子の発現が低下していたことにも着目して、ATP産生や活性酸素などについても検討する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
RNA干渉に関する実験を繰り返したため、その他の実験で高額な試薬や資材などを購入する必要がなかった。また、低酸素培養の実験では研究室内にあった既存設備を使用することで遂行可能であったため別途で追加購入する必要がなかった。
|