本研究では、急性腎障害を起こした患者を前向きに長期経過観察を行い、一般的な心血管系イベントや末期腎不全のリスク因子(血圧、蛋白尿、脂質、血糖、喫煙など)だけではなく、炎症、貧血、骨代謝などについても、予後との関連を検討し、今後の介入研究につなげていくことを目的とする。対象患者は慢性腎臓病(推定糸球体ろ過量(eGFR)が60ml/min/1.73m2未満が3か月以上持続)、尿蛋白陽性:尿定性検査における尿蛋白が(2+)あるいはそれ以上の患者で、心臓血管外科で心臓手術あるいは大血管手術を受ける患者、または消化器外科で、全身麻酔下に腹腔内手術を受ける患者、または悪性腫瘍に対する化学療法を受ける患者である。主要評価項目は全死亡、心血管系イベント(侵襲的処置を必要とする狭心症、閉塞性動脈硬化症、心筋梗塞、脳梗塞、脳出血、入院を要する心不全) 、入院を要する感染症、悪性腫瘍の再発及び新規診断、骨折、functional status、腎機能、透析導入の有無、QOL(SF-36の点数)である。関係各科(心臓血管外科、消化器外科、臨床腫瘍部)の了承を得て、当該年度において、Institutional Review Boardの承認を得て、患者の登録を開始した。現在、25例を登録している。上記の評価項目に加えて、CTで計測される腎容積と急性腎障害の関連、急性腎障害の予後と腎容積の関連も今後、解析していく予定としている。
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