研究課題/領域番号 |
20K17257
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
田中 景子 岡山大学, 大学病院, 助教 (80794370)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ポドサイト / 血小板 / Podoplanin / CLEC-2 |
研究実績の概要 |
Podoplaninは腎糸球体ポドサイトの細胞膜に強く発現するが、その機能は不明である。Podoplaninの内因性結合分子は、血小板に発現するC-type lectin like receptor-2(CLEC-2)である。正常時、ポドサイトは糸球体基底膜により血小板から隔絶されているが、基底膜傷害時に血小板や血漿中の可溶性CLEC-2がポドサイトに作用する事が考えられた。 前年度は、リコンビナントCLEC-2を作製し、in vitroおよびin vivo実験を行った。 in vitro実験では、FcおよびFc-CLEC-2で培養ポドサイトを刺激する実験を行った。Fcコントロールに比較し、Fc-CLEC-2刺激では、ポドサイトのアクチン線維が減少し、細胞突起は収縮し、細胞接着能の低下と遊走能の向上をみとめた。また、Podoplaninとアクチン線維をつなぐ介在蛋白ERMの脱リン酸化をみとめた。 in vivo実験のために、より小分子のStrepTagII-FLAGタグCLEC-2(約30kDa)の発現Vectorを作製し大量精製した。正常マウスに投与したところ、FLAG-CLEC-2の糸球体への接着を確認できた。当初の予測通り、糸球体のRNA解析でSerpine1の上昇をみとめ、電顕SEM像でポドサイトの足突起の退縮をみとめた。糸球体LysateのWestern Blotと蛍光染色では、Ezrinの脱リン酸化をみとめた。 以上より、血小板分子CLEC-2は、糸球体傷害時にポドサイトに発現するPodoplaninに結合し、介在蛋白Ezrinの脱リン酸化により、 Podoplaninからアクチンを乖離させ、アクチン線維の収縮を起こし、その結果ポドサイトは形態変化をおこし、遊走能を獲得することが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度は、ポドサイト傷害と尿中血小板もしくは尿中CLEC-2との相関を明らかにしようとした。尿中血小板はCD41の蛍光抗体法で検出したが、尿中CLEC-2は適正なELISA評価ができず、Western Blotのみならず質量分析での検出も困難であり、定量化は困難を極めた。尿中血小板の検出は、CLEC-2以外の膜蛋白での評価を考慮していく必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
尿中血小板の定量化を行い、ポドサイト傷害度との相関を明らかにする。 また当初から予定している、CLEC-2のin vivo傷害ポドサイトへの効果を動物実験で検証する。 ① CLEC-2欠損マウスにおけるポドサイト傷害の変化:血小板特異的CLEC-2欠損マウスを導入し、NEP25マウスにCLEC-2欠損マウスの骨髄を移植する。ポドサイト傷害後に、血小板CLEC-2欠損が、ポドサイト傷害に与える影響を評価する。このマウスにポドサイト傷害を誘導し、1週間後の蛋白尿、3週間後の硬化糸球体数を評価する。血小板特異的CLEC-2欠損マウスは、山梨大学井上克枝教授から譲渡の確約を得た。 ② ポドサイト傷害モデルマウスへのCLEC-2タンパク投与の効果:NEP25マウスにポドサイト傷害を誘導し、その直後からCLEC-2タンパクの投与を開始する。1週間後の蛋白尿、3週間後の腎傷害に及ぼす影響を評価する。また、NEP25マウスは、傷害誘導の1週間後から修復が開始するが、その時点以降にCLEC-2を投与し、3週間目の糸球体傷害の程度も評価する。 現時点で結果の予測は困難であるが、CLEC-2は病気の早期には傷害を助長し、後期には修復を促進するのではないかと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた動物実験の多くが次年度となったため、予算の大部分が次年度へ見送りとなった。
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