研究課題/領域番号 |
20K17262
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研究機関 | 東京女子医科大学 |
研究代表者 |
宮部 陽永 東京女子医科大学, 医学部, 助教 (40815792)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 細胞シート / 間葉系幹細胞 / 腎虚血再灌流障害 / 慢性腎臓病 |
研究実績の概要 |
本申請研究ではラット腎虚血再灌流障害(Ischemic reperfusion injury: IRI)後に線維化を認める腎臓に対して間葉系幹細胞(Mesenchymal stem cell: MSC)細胞シートを移植することで、「MSCを用いた細胞シート療法による進行した慢性腎臓病(Chronic kidney disease: CKDの治療効果の検討」を目的とし、進展したCKDを抑制して根本的治療に繋げることで、CKDの予後を改善する新規治療法の開発を目指している。 まず、GFP遺伝子導入SDラットの骨髄由来間葉系幹細胞(rBMMSC)の初代培養と継代を行って細胞シートを作成した。rBMMSCによる治癒効果について評価するため、HUVEC創傷治癒アッセイにてrBMMSC培養上清を添加したところ、コントロールよりも創傷治癒効果が高いことを確認した。 次にIRIモデルの確立を目指すべく、5と7週齢のSDラットにおいて虚血時間を40、60分に設定して生存率や腎機能を確認した。5週齢のラット3匹で虚血時間60分としたところ生存率は0%だった。また7週齢で虚血時間40分と60分のラット各3匹の場合、生存率はそれぞれ100%と0%だった。腎機能についてはまずIRI後1日目の血漿クレアチニン(Cr)で評価し、5週齢で虚血時間60分の場合は平均Cr 3.8 mg/dLで、7週齢で虚血時間40分の場合は平均Cr 1.8 mg/dLと上昇を認め、IRIによる腎機能悪化を確認出来た。 さらに、7週齢で虚血時間40分のラットにてIRI後14日目にrBMMSC細胞シートを2枚移植し、細胞シート移植後14日目に犠牲死とし、細胞シート移植腎を摘出した。今後腎摘出時Crと腎病理における線維化改善効果について評価を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
まず、COVID-19流行に伴う施設の一次的な使用停止など、実験自体を行うことが困難な状況があった。そのような環境の中でも実験再開後は、rBMMSC細胞の培養や細胞シート作成については、既報に従い、GFP遺伝子導入SDラットにて確立できつつある。またそのrBMMSCによる治癒効果についてもHUVEC創傷治癒アッセイにて確認できた。その一方で、MSCの細胞表面マーカーなどを用いた特性の確認や、治癒効果をもたらしているサイトカインについては未評価である。また、腎IRIモデルについても既報に従って、条件を様々に設定してみたが、虚血時間60分の場合は生存率が著しく不良だった。原因について腎動静脈内血栓や急性腎傷害に伴う高カリウム血症を疑ったが未評価である。IRIによる腎機能悪化はIRI後1日目のCrにて確認出来たが、細胞シートを移植した治療群と無治療群との比較についてはCrや腎病理の線維化や傍尿細管毛細血管の面積などで評価を行う予定だが未評価である。上記の理由から進捗状況は遅れていると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、MSCの細胞表面マーカーなどを用いた特性については細胞表面マーカーをフローサイトメトリーで確認しつつ、脂肪細胞や骨芽細胞、軟骨細胞への分化能を評価する。治癒効果をもたらしているサイトカインの検出については、サイトカイン定量抗体アレイによる評価を検討している。また、安定したモデルの確立のためには、腎IRI後1日目や28日目などにおける腎病理にて尿細管壊死や腎線維化、傍尿細管毛細血管の面積の程度の評価が必要と考えており、またCrの測定による腎機能評価も行って適切なモデルを確立し、rBMMSC細胞シートによるCKDモデルの治癒効果を検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19感染拡大もあり、実験計画の進捗が遅れたため、予定していた物品の購入を行わなかったことと、学会発表でも現地参加は困難で旅費の必要がなかった。 今後はMSCの細胞表面マーカーなどを用いた特性評価のためのフローサイトメトリーや、脂肪細胞や骨芽細胞、軟骨細胞への分化能評価、サイトカイン定量抗体アレイによる評価、Cr測定や腎病理評価のために必要な物品購入や外部発注などに使用する予定である
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