ラット腎虚血再灌流障害(Ischemic reperfusion injury: IRI)後に線維化を認める腎臓に対して間葉系幹細胞(Mesenchymal stem cell: MSC)細胞シートを移植することで、「MSCを用いた細胞シート療法による進行した慢性腎臓病(Chronic kidney disease: CKDの治療効果の検討」を目的とし、進展したCKDを抑制して根本的治療に繋げることで、CKDの予後を改善する新規治療法の開発を目指した。 2020年は、GFP遺伝子導入SDラットの骨髄由来間葉系幹細胞(rBMMSC)の初代培養と継代を行って細胞シートを作成し、rBMMSCによる治癒効果を、HUVEC創傷治癒アッセイにてrBMMSC培養上清を添加したモデルで評価して、創傷治癒効果が高いことを確認した。 また、IRIモデルの確立を図り、7週齢で虚血時間40分の場合は平均Cr 1.8 mg/dLと上昇を認め、IRIによる腎機能悪化を確認し、さらにIRI後14日目にrBMMSC細胞シートを2枚移植し、細胞シート移植後14日目に犠牲死とし、細胞シート移植腎を摘出した。 2021年は、腎病理を確認したところ細胞シートによる治療効果が有意ではなかったため、既報を参考にして4枚に増やして移植した治療群を4匹、IRIのみで無治療群を4匹、IRIも未施行のsham群2匹と比較する方針とした。腎病理における線維化改善効果についてMasson Trichrome染色を施行したところ、線維化や治療効果のばらつきが大きかった。そのため、2022年は腎摘出時を含めた腎機能を評価したが有意差は認めなかった。ただ、腎組織では治療群で尿細管壊死や線維化の抑制を認めた。また治療効果に寄与した細胞を同定するためのRNA-seqにてAdra2cやLgr6、Fabp3、Sncaで有意差を認めた。
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