研究課題/領域番号 |
20K17272
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
内田 奈生 東北大学, 大学病院, 助教 (30771670)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 尿中落下細胞 / 多能性幹細胞 / 間葉系幹細胞 |
研究実績の概要 |
本研究では尿中落下細胞に含まれる幹細胞を単離・同定し、その性質を明らかにすることを目的とする。IgA腎症、紫斑病性腎炎、アルポート症候群の複数の患者から尿検体の提供を受け、培養を行った。 ・尿中落下細胞内の尿幹細胞の同定:幹細胞マーカーであるアルカリフォスファターゼ陽性細胞を、SSEA-3などの表面抗原マーカーと共染色を試みたが、技術的にうまくいかず、未だ尿幹細胞の単離に適した表面抗原マーカーをしぼりこめていない。 ・尿幹細胞の患者腎組織における局在:患者腎組織をアルカリフォスファターゼ染色し、局在を確認する計画である。 ・尿幹細胞の性質;間葉系組織(骨、軟骨、脂肪)への分化能、多能性の有無:複数患者の尿中落下細胞で、石灰化染色キット(コスモバイオ AK21)を用いて、培養された尿中落下細胞の一部のコロニーにカルシウム沈着を証明した。同様にオイルレッドO染色を基本としたリピッドアッセイキット(コスモバイオAK09F)を用いて、培養細胞の一部に脂肪滴を持つ細胞を同定した。軟骨細胞はサフラニンOによる染色を試みたが、はっきりとした軟骨細胞は証明できなかった。 その他として、尿中落下細胞の初代培養からできる立体構造を足細胞表面に発現するpodocinタンパクに対する抗体で染色すると、立体構造に網目状に発現していた。足細胞は分裂・増殖することはできない高度に分化した細胞であるため、新たにできた立体構造に即細胞マーカーが発現されていることは、一旦未分化な状態で増殖した後、足細胞に分化し可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス流行に伴い、患者さんの外来受診頻度を下げているため、尿検体をもらう頻度が下がった。また、新型コロナウイルスの対策のため、研究の時間が削られた。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、尿中落下細胞内の幹細胞の同定の方法を検討していく。 また、尿中落下細胞が形成する立体構造にpodocinタンパクが網目状に発現していた現象は、糸球体の再生という点で極めて興味深い。糸球体は一旦硬化し、機能を喪失すると、回復することができないが、それは糸球体を構成する細胞のうち、足細胞の再生能力が低いことが主な要因である。尿中落下細胞が増殖し、podocinタンパクを発現する構造を形成したことは、尿中落下細胞内に含まれる幹細胞が分裂・増殖し、足細胞に分化した可能性を示唆する。他の尿検体でも再現性を持ってみられる現象か、確認をしていく。再現性がある場合は、立体構造ができるまでの過程を、分化マーカーで染色しながら追跡していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス流行の影響で、研究時間が大幅に削減された。また、学会への往来も差し控えられたため、旅費がかからなかった。 次年度使用額は、主に抗体の購入と英文校正・論文投稿費に使用する予定である。
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