研究課題/領域番号 |
20K17273
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
渡辺 光治 群馬大学, 医学部附属病院, 助教 (40865052)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 腎線維化 / マクロファージ / Shp1 / フローサイトメトリー / 腎臓病 / 自己免疫疾患 / Vimentin |
研究実績の概要 |
腎の線維化の進展にはマクロファージなどの免疫系細胞が関与するとされているが、依然として詳細は明らかでない。これまで、抑制性のシグナル伝達分子であるShp1をCD11c特異的に欠損するマウス(Shp1 CKO)の腎臓内では、F4/80を高発現するマクロファー ジ(F4/80 high マクロファージ)が著増し、腎の線維化が亢進する事実を確認している。さらには、Shp1 CKOの腎臓内F4/80 high マクロファージは増殖能や炎症性サイトカイン産生能が亢進していることを確認した。そこでShp1 CKOを用いて、F4/80 high マクロファージやShp1と腎線維化の関連について、さらなる解析を行った。 線維化マーカーであるCollagen Ⅰ、Vimentin、α-SMAの免疫組織染色では、40週齢のShp1 CKOの尿細管間質で増加傾向を認めた。そこで、Vimentinとα-SMAの陽性細胞の同定と定量を、細胞内フローサイトメトリー(FCM)を用いて行った。結果、Shp1 CKOの腎で、Vimentin陽性細胞数の有意な増加を認めた。Vimentin陽性細胞はF4/80陽性マクロファージにおいて著増しており、一方でCD45.2陰性細胞(非血球系細胞)においては増加を認めなかった。また、Shp1 CKOでは、腎臓内F4/80陽性マクロファージにおいて、α-SMA陽性細胞の有意な増加を認めた。線維芽細胞のマーカーであるCD73、ER-TR7、PDGFR2bのFCM解析を行ったところ、これらのマーカーが陽性の線維芽細胞は有意な増加を認めず、Vimentinやα-SMAの発現率にも差を認めなかった。これらの結果は、Shp1 CKOの腎臓で増加しているVimentin等の線維化マーカー陽性の細胞は、線維芽細胞ではなく、F4/80陽性マクロファージが主体であることを示唆した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Shp1 CKOの腎臓内で増加している線維化マーカー陽性の細胞を、細胞内フローサイトメトリー解析を用いることで同定・定量できた。その結果、腎線維化において、腎臓内のF4/80陽性マクロファージが重要な役割を持つ可能性が高いことが確認できた。
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今後の研究の推進方策 |
Shp1 CKOの解析によって、腎の線維化にはF4/80陽性マクロファージが深く関与しており、腎F4/80陽性マクロファージはCD11cを発現することから、その制御にShp1が重要である可能性が示唆された。よって今年度は、腎臓内F4/80陽性マクロファージにおける、Shp1に関連したシグナル伝達経路の解析を行う。次に、腎の線維化におけるF4/80陽性マクロファージの直接的な影響を検討するために、Shp1 CKOとコントロールマウスの腎臓からセルソーターにてF4/80陽性マクロファージを単離して、腎臓の線維化マウスモデルに移入する実験を予定する。また、近年、線維化に関連する単球・マクロファージとして、SatM(segregated-nucleus-containing monocytes)という新規の免疫細胞が報告された。よって、Shp1 CKOの腎臓内におけるSatMの同定・定量を検討している。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品購入の際、端数が生じたため、次年度の物品購入費等で使用予定。
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