研究実績の概要 |
昨年度までは心不全モデルである横大動脈縮窄(TAC)を施したマウスの腎臓において、ミトコンドリアの形態変化を認め、それが腎の線維化が関与していることを確認した。この現象を説明する機序のひとつとして交感神経の関与を考えた。そこでTACを施して8週経過したマウスに対して、腎動脈周囲の交感神経を外科的に切除(Renal sympathetic denervation, RSDN)したところ、線維化の程度はあまり変化が見られなかった。これは線維化の程度がかなり軽度なものであるからと考えた。 一方で、心不全による急性腎障害への影響についても調べた。具体的にはTACもしくはShamマウスに対して腎に虚血再灌流を施し、どのように変化するのかを確認した。急性期においては尿素窒素、クレアチニンのデータに変化は見られず、心不全の有無で急性腎障害の程度が悪化することはないと考えられた。腎虚血再灌流を施してから2週後に腎組織を評価したところTACマウスにおいて腎の線維化の軽減がみられた。こちらに関しても交感神経の関与を考え、TAC+腎IRモデルとTAC+腎IR+RSDNモデルを比較した。RSDNを加えたモデルのほうが、腎臓の線維化が増加していることがわかった。このことからTACモデルにおける腎障害は交感神経が抑制的に働いていることを示唆する結果となった。過去の文献を参考にして腎障害軽減に関与する分子(hypoxia inducible factor 1, heme oxygenase 1, Bone morphogenetic protein 7など)がこの現象に関与してるかを検証したが、RNAレベルでは差がなく、今回の現象にどの分子が関与しているかは不明であった。
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