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2020 年度 実施状況報告書

MIA症候群を克服する透析法・長時間透析療法の予後改善効果の解明

研究課題

研究課題/領域番号 20K17277
研究機関名古屋大学

研究代表者

今泉 貴広  名古屋大学, 医学部附属病院, 特任助教 (40867769)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2022-03-31
キーワード長時間透析療法 / MIA症候群 / CKD-MBD / 尿毒素
研究実績の概要

1.具体的内容:長時間透析による低栄養・動脈硬化の進展抑制のメカニズムを解明するために、CPPなどの既知の分子に加え、MIA症候群の進展に関わる未知の分子を明らかにし、透析療法実施中の患者の病態解明及び新たな治療ターゲットの発見を目的として研究を実施してきた。令和2年度に実施した研究はこのうち、CKD-MBD指標と生命予後の解析および動脈硬化や生命予後に関連する尿毒素の探索を実施することを目的として、従来透析・長時間透析患者の透析前採血検体を用いてCalciprotein particle (CPP)とメタボロームの測定を行った。前者は結果を得て解析段階にある。後者については測定を実施中であり、結果の解析まで令和3年度中に実施予定である。また、入院や生存・死亡に関するシステマティックな情報収集を目的として、世界的に利用が拡大しつつあるElectronic Data Capture(EDC)システムであるREDCapを実装し、情報収集を開始した。これと併せて本研究が開始される前から実施してきた体組成分析、QOL測定を継続している。
2.意義:透析時間延伸による生命予後改善効果の分子生物学的なメカニズムの解明に向けて各種マーカーを長時間透析と従来透析の血液検体を用いて測定することができた。このように長時間透析と従来透析の検体を用いた比較研究は前例がほとんどなく、非常に貴重な研究となった。またEDCシステムであるREDCapを本格導入したことにより、高い情報セキュリティを担保しつつ、正確な診療情報収集体制の構築を進めることができた。
3.重要性:本研究により長時間透析による動脈硬化進展抑制ならびに栄養障害抑制効果の解明が可能となり、高齢化著しい透析患者の予後を改善させるための治療ターゲットの特定に結び付くことが期待される。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

当初の予定では令和2年度にCalciprotein particle (CPP)を含むCKD-MBD指標の測定を行う予定であったが、CPPの測定のみ終了した段階である。その他のCKD-MBD指標の測定に際しては、測定対象となる患者を選択するために施設訪問を行い、診療情報の収集を実施する必要があったが、緊急事態宣言等により施設訪問が滞り、測定ができなかった。測定対象者の選定作業をできるだけ早期に再開し、血清カルシウム、リン、副甲状腺ホルモン、FGF23といったCKD-MBD指標の測定を行う予定である。
また、尿毒素の探索を目的としたメタボローム測定を令和2年度から令和3年度にかけて実施予定であったが、測定用の検体準備が終了した。令和2年度内に検体測定を行うことを目標にして準備を進めてきたが、COVID-19の流行のため検体測定のための委託等の手続きに時間を要し年度を跨ぐ形となり、若干の遅れが生じた。
その他、アウトカムデータを収集するためにEDCシステムとしてREDCapを構築してきた。令和3年度よりデータ収集を開始する予定であり、今のところ順調に進捗している。

今後の研究の推進方策

研究を開始するにあたって立てた問い①長時間透析療法によりCPPは低下し、動脈硬化性疾患の発症を予防して生命予後および健康寿命を改善するか、そして②既存の透析効率で予測できなかった動脈硬化や生命予後に関連する尿毒素は何か、を到達点として引き続き研究を継続する。
Preliminaryな結果ではあるが、従来透析に比較して長時間透析患者由来の検体で測定したCPPのほうが低値を示していた。このことは腎移植後にCPPが低下することから透析効率の向上に伴ったものと推察されるが、患者背景による調整、その他のミネラル代謝異常マーカーとの相関などを検討することによってCPP上昇に寄与する因子の同定を目指す。そして最終的にCPP低下効果を介して生命予後が改善しているという仮説を検証する。本研究により長時間透析患者のみならず従来透析患者の動脈硬化の病態解明につながり新規治療につながることが期待できる。
動脈硬化や生命予後、健康寿命延伸につながる因子の探索として尿毒症物質の同定もあわせて行う。代表的な代謝産物として尿毒素として確立した分子であるインドキシル硫酸、ADMAに加えて未知の尿毒素を代謝プロファイル全体の中で探索する予定である。
なお、当初の研究計画には含まれなかったが、大動脈弁硬化症・狭窄症に関する検討を新たにスコープに加えることとした。大動脈弁硬化症・狭窄症は動脈硬化の表現型の1つであるが、透析患者における生命予後およびQOLを大きく左右する疾患であることから病態解明、早期予防が急務である。発生要因としてミネラル代謝異常が関与するといわれており、本研究のもともとのスコープに合致するため合わせて検討を進める。

次年度使用額が生じた理由

COVID-19の流行による緊急事態宣言等により、研究対象者のいる地域への移動が制限され、患者情報の収集を十分に実施することができなかった。患者情報に基づいてCKD-MBD指標である血清カルシウム、リン、副甲状腺ホルモン、FGF23の測定対象者を確定させたのちに測定を開始する予定であったため、次年度にすべて繰り越して使用することとした。また、学会発表に関しても同様に移動制限等のために自粛を余儀なくされた。次年度は、国内外の学会へのオンライン参加、施設への訪問、上記項目を含む検体測定に対して計画通りに支出する予定である。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2020

すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件)

  • [雑誌論文] Impact of old age on the association between in-center extended-hours hemodialysis and mortality in patients on incident hemodialysis2020

    • 著者名/発表者名
      Okazaki Masaki、Inaguma Daijo、Imaizumi Takahiro、Hishida Manabu、Kurasawa Shimon、Kubo Yoko、Kato Sawako、Yasuda Yoshinari、Katsuno Takayuki、Kaneda Fumika、Maruyama Shoichi
    • 雑誌名

      PLOS ONE

      巻: 15 ページ: 235900~235900

    • DOI

      10.1371/journal.pone.0235900

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Additional prognostic value of toe-brachial index beyond ankle-brachial index in hemodialysis patients2020

    • 著者名/発表者名
      Hishida Manabu、Imaizumi Takahiro、Menez Steven、Okazaki Masaki、Akiyama Shin’ichi、Kasuga Hirotake、Ishigami Junichi、Maruyama Shoichi、Matsushita Kunihiro
    • 雑誌名

      BMC Nephrology

      巻: 21 ページ: 353

    • DOI

      10.1186/s12882-020-01991-7

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著

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公開日: 2021-12-27  

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