本研究は、腎臓におけるナトリウム利尿ペプチドのアルドステロン拮抗作用におけるConnective tissue growth factor (CTGF)の機能的意義についてノックアウトマウスを用いて検討することを目的とした。 昨年度にポドサイト特異的GC-A コンディショナルKOマウス(pod GC-A cKO)と全身性誘導型CTGFノックアウトマウス(Rosa CTGF cKO)を交配して、ポドサイト特異的GC-A;CTGFダブルノックアウト(pod GC-A;CTGF dKO)マウスを作製した。今年度は本マウスに対して12週齢で左腎摘出術を行い、その後14週齢から6%高食塩負荷、浸透圧ミニポンプによるアルドステロン投与を開始、毎週体重や血圧測定、蓄尿を計4週間継続した後屠殺を行い、pod GC-A;CTGF dKO とpod GC-A cKOとの表現型の比較検討を行った。まず糸球体でのCTGF mRNA発現は、pod GC-A cKOと比較してpod GC-A;CTGF dKOで約40%抑制されていた。血中のアルドステロン濃度は、dKO とpod GC-A cKOで同程度の上昇を認めた。次に体重、血圧、尿量、腎重量の測定を行ったところ、dKO とpod GC-A cKOとの間でいずれも明らかな差は認めなかった。また腎組織の検討では、糸球体サイズやメサンギウム基質の増生の程度において両者に明らかな差を認めなかった。一方でアルブミン尿はdKO群で増加を示す傾向が見られた。 以上の成績より、ポドサイト特異的にGC-Aを欠損させ、高塩食・アルドステロン投与を行ったポドサイト傷害モデルにおいて、CTGF欠損によりアルブミン尿が増悪する可能性が示唆された。ポドサイトにおけるCTGFの役割を解明すべくさらなる検討が必要と考えられ、その機序解明に関する解析を進めている。
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