本研究では、Artificial Intelligence(AI)に超解像度顕微鏡画像の情報を組み合わせ、腎生検画像からより正確に腎疾患を診断し、さらに腎予後を予測できるAIを構築する。 超解像度顕微鏡を用いた腎組織の評価では、AI診断に用いるものと同一の、染色済みの臨床診断用光学顕微鏡用腎生検組織をそのまま用いて腎微細構造を定量的に評価し、通常の光学顕微鏡では観察が困難な腎微細構造変化の程度が尿蛋白や腎生検後の腎機能低下速度といった臨床情報と相関することをすでに報告した。この結果から、光学顕微鏡用組織には、ヒトが認知可能な情報以上に病態を反映する様々な情報が内在していることが示唆された。本研究のAI開発においては、ヒトに劣らない精度で診断できるシステムの開発のみならず、ヒトが認識していないが組織に内在する「疾患を特徴づける因子」の抽出を行う。全国多施設の協力により、5002例の腎生検画像のWhole Slide Image(WSI)および臨床情報のデータセットは作成済みである。WSIから切り出したパッチ画像を用いてAIの学習を行い、腎病理組織のSegmentationおよびその視覚化を行い、糸球体や尿細管における病変領域を定量的に評価できるAIを作成した。さらに、これらの評価結果を各施設で診断された組織評価スコア等と比較したところ、IgA腎症におけるMEST-C組織評価スコアなど各施設において評価された組織スコアを反映したスコアリングが可能であることが明らかとなった。また、AIの眼で見た糖尿病性腎症の組織学的な特徴の抽出ができる可能性を示した。現在までの実績について報告する論文を作成している。今後、超解像度顕微鏡画像情報や縦断的な臨床情報をくわえて解析することにより、さらなるAIの性能上昇を目指す。
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