研究課題
シスプラチン誘発腎毒性のメカニズムは、予防/治療薬の開発を目的として多くの研究が実施されている。フェロトーシスは、鉄を介した脂質過酸化によって誘発される非アポトーシス性の新たに同定された細胞死の形態であり、さまざまな疾患の病態生理学に関与している。この研究では、鉄を介した脂質過酸化によって誘導される非アポトーシス性の調節細胞死フェロトーシスが、抗がん剤誘発性腎障害における役割を解明することを目的とした。シスプラチン投与48時間の急性腎障害モデルマウスにおいて、腎臓のTransferrin ReceptorおよびFerritin Heavy Chainタンパク質の発現量の増加に伴い、鉄含有量が増加すること、ヒドロキシラジカルが増加することからフェントン反応の発生が示唆された。さらに、鉄キレート剤deferoxamineの使用によって、シスプラチン投与マウスの腎臓におけるフェロプトーシスのマーカーであるCOX-2発現および脂質過酸化の増加を抑制した。フェロトーシスの阻害剤であるFerrostatin-1においても同様の効果が確認された一方で、シスプラチンによって誘発されたアポトーシスとネクロトーシスは、Ferrostatin-1の処置によって抑制された。さらに、鉄キレート剤であるデフェロキサミンもシスプラチンによる腎障害を抑制し、COX-2および脂質過酸化の増加を抑制した。したがって、シスプラチンは鉄を介したフェントン反応による脂質過酸化を介してフェロトーシスの誘導に寄与する可能性が示唆された。このことから、フェロトーシスは新しい予防標的として使用される可能性がある。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件)
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