研究課題/領域番号 |
20K17290
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
駒田 敬則 自治医科大学, 医学部, 講師 (90824730)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | インフラマソーム / 細胞死 / M1マクロファージ |
研究実績の概要 |
慢性腎臓病(CKD)の腎組織にはマクロファージなどの炎症細胞浸潤が持続し、無菌性炎症が進展に関与する。CKD腎に発症した急性腎障害(AKI)(Acute-on-chronic腎障害)は通常のAKIよりも重症化しやすく、腎予後も極めて悪い。その要因のひとつとして、CKD腎に浸潤する炎症細胞死が組織傷害を拡大する可能性がある。死細胞成分のセンサーであるパターン認識受容体(PRR)は、炎症と細胞死を惹起するインフラマソームの重要な構成分子である。本研究ではインフラマソームを介した、細胞壊死による炎症の伝播がAcute-on-chronic腎障害に果たす役割を解明することを目的とした。 Acute-on-chronic腎障害モデルの作製を行い、腎機能・腎組織解析を行った。複数条件を検討し、Acute-on-chronic腎障害ではマクロファージ浸潤が有意に増加し、そこでASC集合体が検出されたことから、炎症細胞でインフラマソームが形成され、マクロファージ浸潤に関与していることが示唆された。 一方、細胞実験において、炎症性のM1マクロファージではIL-1等のサイトカインを誘導して周囲細胞に炎症を広げるものの、腎マクロファージでM2マクロファージが有意な場合、炎症性サイトカインをほとんど分泌せずにパイロトーシスを誘導しうることが判明した。CKD腎では経時的に浸潤マクロファージの分化状態が変化することから、傷害のタイミングがAcute-on-chronic腎障害での慢性炎症増悪に影響すると予想される。今後、M1・M2マクロファージ細胞死の役割についての研究を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
予想と異なり、Acute-on-chronic腎障害における増悪が小さかったことから、動物モデルの確立に時間を要した。そのため、進捗状況としてはやや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
Acute-on-chronic腎障害ではマクロファージでのパイロトーシスが病態に関与していると考えられた。マクロファージ細胞死は、その分化状態によって周囲への炎症誘導作用が異なることから、腎疾患重症化に関与すると考えられた。今後、細胞実験を中心として、異なる分化状態のマクロファージにおけるパイロトーシスの解析と、死細胞による貪食細胞の炎症反応の解析を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
解析に用いる遺伝子改変マウスの繁殖が遅れ、計画を延長して実施するため。未使用金は、次年度に延期した実験に関する消耗品などに使用する予定である。
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