慢性腎臓病(CKD)においては、腎組織に炎症細胞浸潤が持続し、無菌性炎症が関与すると考えられる。臨床的にも、CKD腎に発症した急性腎障害(AKI)(Acute-on-chronic腎障害)は通常のAKIよりも重症化しやすく、腎予後も極めて悪い。 CKD腎においては、浸潤した炎症細胞が細胞死を起こすことで炎症性サイトカインや死細胞内容物を放出することで、組織傷害を拡大する可能性がある。様々なパターン認識受容体(PRR)が死細胞成分を認識するが、そのうち、NLRP3やAIM2はインフラマソームを形成することで炎症と細胞死(パイロトーシス)を惹起する。本研究では、インフラマソームを介したAcute-on-chronic腎障害の動物モデルを作成し、解析を行った。 アデニン食を与えたマウスに片側虚血再灌流を行い、腎組織を解析したところ、CKD腎ではLTLで染色される近位尿細管の脱落、筋線維芽細胞増生が認められ、シリウスレッド染色でも線維化の増加が認められた。非CKD・CKD腎ともに、IRI後のマクロファージ浸潤が有意に増加した。CKD腎ではIRI後の炎症細胞でASC集合体が検出され、インフラマソーム形成が関与していることが考えられた。マクロファージを用いた細胞実験において、二本鎖DNAによるパイロトーシス誘導を解析した。様々に分化したマクロファージで、同様にパイロトーシスが起きることが判明し、組織修復に関わる非炎症性マクロファージ(M2型)においては、HMGB1やASCの流出が多く認められた。一方でIL-1β分泌は炎症型マクロファージ(M1型)でのみ認められ、M1の細胞上清によって、尿細管細胞やマクロファージでの炎症が拡大することが分かった。今後、マクロファージ細胞死による周囲細胞の反応につき、さらにメカニズムを解析する予定である。
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