研究課題/領域番号 |
20K17292
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
牧田 侑子 順天堂大学, 医学部, 助教 (20838487)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | IgA腎症 / 補体 / 糖鎖異常IgA1 / 免疫複合体 |
研究実績の概要 |
IgA腎症の腎糸球体ではC3が沈着しC1qは沈着しないこと、C5やC5b-9も染色されることから補体第二経路の活性化が腎組織障害に重要であると考えられている。一方、mannose-binding lectinがC4dとともに糸球体に沈着する症例では、腎組織障害度、尿蛋白、腎予後が悪いことから、レクチン経路の活性化が病態を増悪させると考えられている。当院で腎生検を施行したIgA腎症28症例のC4d沈着および糖鎖異常IgA1を特異的に認識するモノクローナル抗体:KM55抗体を用いて糖鎖異常IgA1沈着を評価した。C4d陽性10症例、陰性18症例の2群に分けて比較検討した。診断時の尿蛋白量はC4d陽性例で有意に高値であり(P<0.01)、組織学的重症度はC4d陽性例が有意に高かった(P<0.01)。さらに、International IgAN prediction toolを用いた検討では、5年後に末期腎不全に至る確率はC4d陽性例が有意に高かった(P<0.01)。血中糖鎖異常IgA1とC4d沈着は相関を認めなかったが、尿中糖鎖異常IgA1と糖鎖異常IgA1沈着面積はC4d陽性症例で高値となる傾向がみられた。C4d沈着はIgA腎症の糸球体組織障害の進展に関与する可能性と糖鎖異常IgA1沈着がこのレクチン経路活性化に寄与していることが示唆された。糖鎖異常IgA1による糸球体障害を検討するため、ヌードマウスに糖鎖異常IgA1、糖鎖異常IgA1-IgG 免疫複合体を静注し、比較検討した。糖鎖異常IgA1のみでは糸球体障害は惹起されなかったが、糖鎖異常IgA1-IgG 免疫複合体は糸球体内皮細胞障害を誘導し、IgA沈着、補体活性化が誘導されることが確認された。糸球体障害には糖鎖異常IgA1-IgG 免疫複合体形成が重要であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
IgA腎症患者の腎組織を用いた補体経路活性化の評価は予定通り進行している。また、糖鎖異常IgA1による糸球体障害、補体活性化の検討についてはヌードマウスを用いることで解析を進めることができている。今後は、メサンギウム細胞および内皮細胞を用いて、糖鎖異常IgA1による補体活性機序の検討を進める予定である。
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今後の研究の推進方策 |
IgA腎症患者の腎組織を用いて、補体活性経路の因子を各種染色で評価し、糖鎖異常IgA1沈着との関連を評価する。また、糖鎖異常IgA1および糖鎖異常IgA1-IgG免疫複合体による糸球体障害を検討するため、メサンギウム細胞および糸球体内皮細胞を用いた評価を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
少額の余りが生じたため、翌年度の研究計画に使用することにしたため。
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