研究課題/領域番号 |
20K17293
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
狩野 俊樹 順天堂大学, 医学部, 助手 (00866733)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | IgA腎症 / 糖鎖異常IgA1 / 粘膜免疫応答異常 / Toll like receptors |
研究実績の概要 |
IgA腎症で腎組織に沈着するIgA1は、IgA1ヒンジ部のO-結合型糖鎖修飾不全を呈した、いわゆる糖鎖異常IgA1が主体であることが明らかとなっている。本症の病態は、糖鎖異常IgA1が抗原として認識され、IgAやIgGと高分子の免疫複合体を形成することにより、糸球体に沈着すると考えられている。その一方、その形成の起序や主な産生部位について未だに解明されていない。本邦においては扁摘パルス療法が一定の効果を示していることから、扁桃を中心とする上気道関連リンパ組織(NALT)との関連が指摘される。しかし、下痢や感染などの消化管疾患を契機にIgA腎症の増悪する症例があり、食物、細菌、ウイルスなどの抗原を契機とした腸管粘膜応答との関与が考えられる。腸管粘膜は400m2という膨大な粘膜面積を有し、粘膜IgAの主たる産生部位であることや、現在欧州で行われているNEFIGAN TRIALの中間報告で、腸管選択的ステロイドのIgA腎症に対する有効性が報告されたこともその関連を裏付ける。また近年、IgA腎症において細菌やウイルスの共通した抗原構造を認識し生体防御に働く自然免疫系の中心をなす分子であるToll like receptor(TLR)の関与が報告されており、自然免疫系の活性化が腎炎惹起性IgAの産生を増加させるといった、特定抗原によらない腎症の発症・進展のメカニズムの可能性が議論されている。これらのことから本研究では、IgA腎症におけるTLRsを介した粘膜免疫応答について検証することを目的としている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
GALT由来のIgAは血清や脾臓とは糖鎖修飾パターンが異なることで免疫複合体を作らないと考えられた。また、ヒトIgA腎症の自然発症モデルであるddYマウスは無菌マウスではIgA腎症を発症しないことも判明した。これらのことから、進歩としてはおおむね順調である。
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今後の研究の推進方策 |
今後の予定として、IgA腎症発症ddYマウスに対してTLR9のリガンドであるCpG-ODNで脾臓、MLN、NALT細胞を培養・刺激し、上清中のIgA、糖鎖異常IgA、IgG-IgA免疫複合体を測定し、比較検討を行う。また現在無菌化マウスの検証を行っており、NALTあるいはGALTを選択的に刺激を行い、いずれの部位が糖鎖異常IgAの首座であるかを検証する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID19の影響により旅費がなくなったため。次年度もCOVID19の影響はあると考えられ、物品費などに計上する予定である。
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