IgA血管炎の成人発症例における腎予後は悪く、早期診断・早期治療介入が必須であるが、その病態すら明らかにされていなかった。近年申請者らはIgA腎症と腎炎合併IgA血管炎の発症には糖鎖異常IgA1が関与しており、糖鎖異常IgA1を介した共通の病態を有していることを見出した。そこで、IgA腎症と腎炎合併IgA血管炎の類似性を基に、IgA血管炎における腎炎発症の予測因子を開発することを立案するに至った。IgA血管炎の腎炎発症予測因子の確立のために、2020年度より皮膚科と連携することで紫斑を初発症状とするIgA血管炎患者のリクルートを開始した。2022年度終了時点で計13人の患者のリクルートを行った。糖鎖異常IgA1のモノクローナル抗体であるKM55染色で皮膚生検の検体と腎生検の検体を染色したところ、両検体ともにIgAとKM55の共染色を認め、腎臓と皮膚に沈着している糖鎖異常IgA1は同様のものであることが判明した。IgA腎症において糖鎖異常IgA1との病勢や発症との関連が示唆されており、同様にIgA血管炎の病態と関連を示唆されている血清中バイオマーカー(IgA、IgG、IgA-IgG免疫複合体、糖鎖異常IgA1)及び尿中糖鎖異常-IgA1の測定を行った。腎炎合併例と腎炎非合併例でこれらのバイオマーカーは紫斑出現時点では優位差はなく、また通常のIgA腎症とも比較したが明らかな優位差は認めず、IgA血管炎の腎炎発症を予測しうる有効なバイオマーカーとはいえない結果であった。さらに半年間経過を確認したが治療を行った症例が一部であり、治療内容との関連も見出せなかった。今回の研究では腎炎非合併症例が少なかったこと、観察期間を半年に設定したため腎症が発症するには期間が短かかったことが今回の結果となった要因であると考えられた。
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