研究課題/領域番号 |
20K17295
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
小泉 賢洋 東海大学, 医学部, 講師 (30566170)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 糸球体硬化症 / 細胞外基質 / Ⅰ型コラーゲン / PHGDH / メサンギウム細胞 |
研究実績の概要 |
【研究目的・背景】糸球体硬化症は慢性腎不全に共通して認められる組織形態であり,糸球体にⅠ型コラーゲン等の細胞外基質が蓄積する不可逆的変化である.申請者等は,高率に再現性良く糸球体硬化症の誘導が可能なマウスモデルを開発し,硬化糸球体蛋白質の質量分析により,Ⅰ型コラーゲンの主要な構成アミノ酸glycine産生経路の律速酵素であるD-3-phosphoglycerate dehydrogenase(PHGDH)が増加していることを見出した.本申請の研究では,「糸球体硬化症ではPHGDHの増加によりコラーゲン産生が亢進しており,PHGDHの阻害により糸球体硬化症は軽減可能である」という仮説の検証を行う.これは糸球体硬化症の根本的治療の開発に繋がることが期待される.【方法】硬化糸球体で主にⅠ型コラーゲン産生しているメサンギウム細胞をin vitroで再現するために,培養メサンギウム細胞にTGF-β刺激を行う.正常ラット腎よりSieving法を用いて糸球体を採取,RPMI-1640を主とした培地を用いて初代メサンギウム細胞培養系を確立する.TGF-β1を培地に添加(10 ng/ml),6, 24, 48時間の時点で細胞を回収し,PHGDHに関しRT-PCRにて定量する.【結果】Thy-1の免疫染色により,培養細胞がラットメサンギウム細胞であることが確認しメ細胞培養系を確立した.この細胞にTGF-β1を添加,48時間後の時点で,PHGDH mRNAは軽度増加した.Ⅰ型コラーゲンα1,2鎖のmRNA(Col1a1,2)は2-3倍程度に増加した.【研究成果の意義】in vitroにおいて,TGF-β1添加によりPHGDHとⅠ型コラーゲン転写亢進が誘導されることが示された.前述の通り,PHGDHはコラーゲン材料アミノ酸であるglycine産生経路の律速酵素であり,PHGDH抑制により傷害メサンギウム細胞におけるコラーゲン産生が抑制される可能性が想起される.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
PHGDH mRNAのTGF-β添加による増加が想定よりも軽度に留まり,その原因について検討している.現在の初代培養細胞系での十分な証明が困難であれば,他施設より提供頂いた不死化細胞株を用いた検討を行う.また,in vivoでの検討に用いるマウスの準備に時間を要しており,このことも進捗が遅れている原因である.
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今後の研究の推進方策 |
1. in vitroにおける検討:RNA干渉によるPHGDH遺伝子抑制とPHGDH阻害薬により,傷害メサンギウム細胞におけるⅠ型コラーゲンの産生亢進が抑制されるか否か検討する. 2. in vivoにおける検討:ポドサイト傷害モデル(NEP25)マウスを用いて糸球体硬化症を誘導し,PHGDH mRNAや蛋白の増加の有無を検討ののち,PHGDH阻害薬により軽減しうるか否か検証する. 3. 尿中PHGDHのバイオマーカーとしての可能性に関する検討:尿中PHGDH活性と組織学的所見・PHGDHの免疫染色性との相関性を検討し,糸球体硬化症発症の予知可能なバイオマーカーとなりうるか検証する.
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次年度使用額が生じた理由 |
実験計画の進捗が遅れていることにより,次年度使用額が生じた.次年度は,この予算を用いて以下の実験を行う予定である. 1. メサンギウム細胞培養系を用いたin vitroにおける検討 2. ポドサイト傷害モデル(NEP25)マウスを用いたin vivoにおける検討 3. 尿中PHGDHのバイオマーカーとしての可能性に関する検討
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