研究実績の概要 |
近年、常染色体顕性遺伝多発性嚢胞腎(Autosomal Dominant Polycystic kidney disease:ADPKD)における種々の細胞生物学的研究、 動物モデルを利用した研究 などから, ADPKDには糖代謝, 脂質代謝異常に関係するミトコンドリア異常が存在することがわかり、同疾患の病態解明, 新たな治療ターゲットとして注目されてきている。 本研究では、PKD1/2変異(Polycystin蛋白異常)がもたらす種々のミトコンドリア表現型のうち、活性酸素種(mtROS)増加, 脂肪酸β酸化異常、ミトコンドリア動 態異常(分裂-融合のバランス異常)に着目し, PKD変異がどのようにミトコンドリア表現型に関わっているのか? ミトコンドリア表現型の是正は多発性嚢胞腎治療 につながるか? を検証している。また、PKD変異にともなうミトコンドリア表現系が、既存の化合物によって、どの程度、どのように是正されるかについて検証 を進めている。 Polycystin1/2が関わるミトコンドリア表現型には、低酸素感知分子EGLN2依存的な経路、 miR17-92を介する経路、細胞内Ca濃度に起因するPGC1a低下の経路など、種々のメカニズムの関与が示されている。しかしcleavageを受けたPolycystin1がミトコンドリア基質に局在することが確認されているため、Polycystinの 直接的分子機序が存在するという立場をとっている。
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