研究実績の概要 |
本検討では10週齢のC57BL/6Jマウスに0.2%(w/w)アデニン(0.8%リン)含有の特殊食を6週間負荷し、腎不全を惹起した。次に、16週齢より食餌を0.2%(w/w)アデニン含有1.8%リン含有の高リン負荷食に変更し10週間負荷することで、高リン血症とMACを呈する実験動物モデルを作成した。 非治療群(Vehicle群)では薬剤投与は行わず、治療群のSBI-10群, SBI-6群, SBI-4群では0.03%(v/v)のTNAP特異的阻害薬であるSBI-425を混餌し、CKDモデルのリン負荷開始(16週齢)からそれぞれ10, 6, 4週間行った。 実験終了時の平均体重、心臓重量、左右の腎重量はいずれも、Control群に比してCKDモデルの4群で減少が見られたが、CKD群間ではいずれも有意な差を認めなかった。血中尿素窒素、血清クレアチニン、血清リン、FGF-23、intact PTHはControl群に対して顕著に上昇していたが、CKD群間では有意差は認めなかった。 全身単純CTではVehicle群で大動脈、心室壁、両側腎臓、肩甲骨周囲の軟部組織などに異所性石灰化が観察され、その程度は高リン食負荷開始後経時的に増悪した。一方、SBI-10群では異所性石灰化は顕著に抑制された。 大動脈組織と腎組織ではSBI-10群を除く各群でVon-kossa染色陽性の異所性石灰化を認めた。 病理組織所見の定量的評価を目標として、各群の石灰化エリア面積比(%)を算出した。Vehicle群では全群の中で最も高度に血管中膜石灰化(MAC)・腎石灰化を認めた。一方、実験終了時の石灰化重症度は大動脈、腎臓ともにVehicle群>SBI-4群>SBI-6群>SBI-10群の順となり、大動脈・腎臓の石灰化重症度はSBI-425による治療期間の長さと反比例の関係をとることが示された。
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