本研究では、ミネラルであるリンがファーストメッセンジャーとして、どのような機構を介して、報告者が骨におけるリン感知分子として同定した線維芽細胞増殖因子受容体1(fibroblast growth factor receptor 1: FGFR1)をリン酸化し、生物作用を発揮するのかを解明することを目的とした。また、リン感知分子としてのFGFR1の生体における臨床的意義について明らかにすることを目指した。報告者は、FGFR1に対する特異的な抗体が世界的に見ても存在しないことを克服するため、標識としてGFPを付加したFGFR1を用いて代替する計画を立てた。モデル細胞である骨芽細胞用細胞株UMR106において、GFP付加FGFR1安定発現細胞株の樹立に成功した。本細胞を用いて、細胞外リン濃度を上昇させた時にFGFR1への結合が変化する蛋白を、GFP-Trap法を用いたLC-MS/MSにより網羅的に解析を行った。しかし、膜蛋白であるFGFR1において、GFP蛋白を変性させずに効率よく抽出する条件検討に課題を残している。一方、FGFR1と相互作用を示す蛋白として、Ⅲ型ナトリウム-リン共輸送体 (PiT1、PiT2)に着目した。結果、リンによるFGFR1のリン酸化に、PiT1を介した細胞内へのリンの取り込みが必須であることが明らかとなった。また、FGFR阻害剤を用いた動物実験から、副甲状腺におけるリン感知にもFGFR1が関与していることが示唆された。
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