糖尿病性腎症の発症・進展における糸球体上皮細胞(podocyte)でのインスリンシグナル伝達系の関与について検討するため、インスリンシグナル伝達系の最重要因子であるPDK1のpodocyteにおける活性に着目し、podocyte特異的PDK1 KOマウスを作製・評価を行った所、PDK1 KOマウスでは生後早期からタンパク尿が出現し腎不全死にいたることを見出した。次に、その病態メカニズムを解明するため、我々は転写因子FoxO1に着目し、podocyte特異的PDK1-FoxO1欠損マウスを作製・評価を行った所、腎不全死は阻止出来なかった。そこで本研究では、PDK1欠損により生じる腎機能障害の原因となる分子を同定し糖尿病性腎症の新たな標的因子の探索を行なった。 尿細管においてFoxO3aが腎保護に働くという報告より、他のFoxOファミリー分子による病態への寄与を考え、我々はpodocyte特異的PDK1-FoxO3a欠損マウス(FoxO3aDKO)を作製した。Pdk1-floxホモマウスとfoxo3a-floxホモマウスとの交配によりpdk1 & foxo3aダブルfloxホモマウスを作製後、podocyte 特異的 Cre recombinase Tgマウスとの交配によりFoxO3aDKOを作製し、それらのマウスの尿および血液の採取を行い生化学的解析を行なった。また、分子機序解明としてPdk1-floxホモマウスから単離した初代培養podocyteにアデノ随伴ウイルス「AAV Cre recombinase」を感染させPdk1遺伝子の発現を消失させた際の発現変動因子解析のためにAAV Cre recombinaseを作製した。
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