本研究ではKLK6が皮膚バリア機能に与える影響とそのメカニズムについてKLK6ノックアウト(KO)マウスを用いた研究により明らかにすることを目的とする。 最初に野生型マウスとKLK6 KOマウス皮膚を比較し、正常皮膚におけるKLK6の機能を解析した。増殖マーカーであるKi67の免疫染色を行ったところ、野生型マウスと比較してKLK6 KOマウス表皮ではKi67陽性細胞数が有意に低下していた。次に表皮細胞の分化マーカーであるフィラグリン、インボルクリン、ロリクリンの免疫染色を行ったところ、2つのマウス群の表皮で発現に差異は見られなかった。以上の結果から正常表皮においてKLK6は表皮細胞の増殖に寄与する一方で、分化には影響を与えないことが示唆された。 次にバリア機能障害のマウスモデルとしてテープストリッピングによる皮膚炎モデルを作成した。過去の報告と同様にテープストリッピングにより、病理組織学的にも表皮肥厚や炎症細胞浸潤が確認された。KLK6の免疫染色を行ったところ、テープストリッピングによる皮膚炎で肥厚した表皮上層にKLK6の発現が誘導されることが明らかになった。このことはアトピー性皮膚炎患者の表皮でKLK6の発現が増加しているという過去の報告と一致していた。 さらに野生型マウスとKLK6 KOマウスにテープストリッピングによる皮膚炎を誘導した。2つのマウス群で表皮のKi67陽性細胞数を比較したところ、野生型マウスと比較してKLK6 KOマウスでは有意に減少していた。このことからKLK6はテープストリッピングによる皮膚炎において表皮細胞の増殖に寄与することが明らかになった。以上の結果からKLK6が皮膚バリア機能障害時の皮膚炎の増悪に関与する可能性が示唆された。
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