研究課題/領域番号 |
20K17305
|
研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
野口 奈津子 秋田大学, 医学部附属病院, 医員 (60343068)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | アトピー性皮膚炎 / 皮膚バリア機能 / aPKCλ / プロテインキナーゼC / DNFB |
研究実績の概要 |
アトピー性皮膚炎での皮膚のバリア機能異常には、フィラグリン遺伝子変異以外の関連因子も関連する可能性があると考えられているが、更なる有力な候補因子は明らかになっていない。細胞極性を制御するatypical PKC(プロテインキナーゼC)-PAR経路は、1.皮膚のタイトジャンクションでの機能、2.炎症の経路の制御、の2つの機能が知られており、本研究では、aPKCが関わる(1)皮膚バリア機能への影響、(2)炎症の調整が、アトピー性皮膚炎の発症や増悪にどの程度影響しているかを検討する。 令和2年度は、表皮特異的にaPKCλを欠損したノックアウトマウスの背部皮膚と耳介に、2,4-dinitrofluorobenzene(DNFB)を週に1回、3週にわたって計3回、塗布することにより皮膚炎を誘発してコントロールマウスとの所見の変化を比べた。その結果、ノックアウトマウスでは塗布の回数を重ねるごとに耳介の腫脹が強くみられた。 令和3年度は、DNFBを塗布後に採取した組織について、耳介の肥厚の程度、耳介表皮の肥厚の程度、真皮の炎症細胞浸潤の程度について、コントロールマウスと比べてどの程度強くみられているか、統計学的に分析した。また、採取した組織についても、ウエスタンブロット法にて解析中である。 また、アトピー性皮膚炎患者の炎症皮膚において、aPKC系が活性化しているのかを調べるため、アトピー性皮膚炎患者と正常コントロールの皮膚組織について免疫組織学染色を行っている。aPKCλについては、アトピー性皮膚炎患者の炎症部の皮膚においては、強く発現していた。しかし、他の、表皮の肥厚がみられる有棘細胞癌などの皮膚疾患においても、aPKCλが強く発現していることから、アトピー性皮膚炎の患部に特異的な所見なのかどうかの検討中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
理由:今年度の研究目標は、表皮特異的にaPKCλを欠損したノックアウトマウスでのDNFB塗布による湿疹惹起した組織を採取して組織学的な解析を行い、定量化をすすめることであった。コントロールマウスと比べて炎症が強く発現することが分かっていたが、ノックアウトマウスでは組織学的にコントロールと比べて有意に表皮肥厚、炎症細胞浸潤、等が強くみられる結果が得られているが、コントロールと比べて所見が得られるのかを検討することであった。アトピー性皮膚炎患者の皮膚免疫組織染色とアトピー性皮膚炎患者の免疫組織染色ではaPKCλが表皮に強く発現していることが分かったが、他の皮膚疾患でも発現しているため、さらに検討が必要であり、やや遅れていると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度は、aPKCλを表皮特異的にノックアウトしたマウスでは、(1)皮膚バリア機能障害されているのか、あるいは(2)炎症の調整が障害されているのか、について、皮膚の角質水分量および経皮水分蒸発量(transepidermal water loss、TEWL)測定や炎症部皮膚組織のバリアおよび炎症関連タンパクのウエスタンブロットなどでの解析をさらに進めていく。 また、また、個々のアトピー性皮膚炎患者のTARC、好酸球、総IgEなどの臨床検査データと染色した組織の染色性の程度、染色パターンなどに相関性があるのかを検討していく予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
(理由)研究は比較的順調に進んでいるが、当研究室にあった試薬などを使うことができたため、余剰を次年度に繰り越した。 (使用計画)次年度はマウスの飼育費に加えて、免疫染色や免疫ブロットをはじめとする生物学的実験に使用していく予定である。
|