T細胞サブセットであるTh17細胞と制御性T (Treg)細胞は、分化の段階で影響し合い、バランスをとることで、自己免疫性疾患を制御することが知られている。そこで、本研究では、全身性強皮症の病態の解明及び新規治療の開発を目的として、強皮症におけるTh17/Treg細胞バランスの病態への関与に着目した。蠕虫感染症は、宿主のTreg細胞を誘導することで、アレルギーや自己免疫性疾患などを改善させることが報告されている。我々は、ブレオマイシン誘導強皮症モデルマウスにおいて、蠕虫を事前に感染させると、マウスの皮膚線維化が有意に抑制されることを明らかにした。また、線維化皮膚におけるCD3陽性T細胞及びCD68陽性マクロファージといった炎症細胞浸潤が、蠕虫感染により有意に減少した。さらに、マウスリンパ節では、ブレオマイシン投与により増加していたTh17細胞が、蠕虫感染により減少し、それと同時にTreg細胞数が増加することを確認した。これらの蠕虫感染に伴う効果は、Treg細胞の枯渇によってキャンセルされたため、蠕虫感染により誘導されたTreg細胞が、Th17細胞を抑制し、皮膚繊維化を抑制することが示唆された。次に我々は、蠕虫が、寄生先である宿主の腸管において腸内細菌叢を変化させることで、Treg細胞を増加させ、皮膚線維化を抑制したのではないかと推測し、腸内細菌と強皮症との関連についても検討を行った。その結果、強皮症モデルマウス及び重症強皮症患者では、特徴的ないくつかの細菌が明らかになった。強皮症の病態との関連に対する詳細な検討は、今後の課題である。本研究の結果から、Treg細胞とTh17細胞のバランスを調整することが、強皮症患者の強皮症治療に応用できる可能性が示唆された。
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