研究課題
硬化性苔癬は病理組織学的に液状変性、真皮上層の膠原線維の均質化を認める。この特徴的な所見に普遍性があり、診断基準にも挙げられていることを基盤に、申請者は表皮-真皮境界部の基底膜における変化が、本症の病態形成に関与している可能性を本研究において検討してきた。硬化性苔癬患者の病変部皮膚を用いて、様々な基底膜含有抗原に対する特異的抗体で免疫染色とレーザー共焦点顕微鏡での観察を行った。さらに、膠原線維と弾性線維を染め分けて、本症の病変の主座である真皮線維の客観的な変性所見を同定した。基底膜における主たる接着分子4型および7型コラーゲン、ラミニン332の発現様式に不規則な断裂や肥厚、ねじれ構造が認められた。また、真皮血管壁の4型コラーゲンの染色性に膨化や2重化がみられた。これらの結果は、硬化性苔癬の皮疹部には恒常的に発現する基底膜抗原の構造的な脆弱性と機能異常が関与していることを示唆していると考えられた。本症の血清中には抗ECM1抗体が存在することが指摘されているが、7型コラーゲンとECM1タンパク自体が直接in vitroで結合することを抗原特異的なELISA法で確認した。次に、in vitroで ECM1の細胞生物学的な機能を検討すべく、ECM1分子をsiRNA法でノック ダウンしたヒト線維芽細胞を作成した。この細胞をcDNA マイクロアレイで解析したところ、基底膜抗原の他に上皮-間葉転換関連分子の発現レべルに変化が認められた。硬化性苔癬の病変部皮膚から抽出したcDNAをマイクロアレイで解析し、ECM1ノックダウン細胞と比較することで、線維芽細胞特異的な線維化機構や癌化のメカニズムに関わる「病態感受性遺伝子群」を絞り込む作業の途中である。これと並行して、生体内のECM1機能異常に連鎖した疾患感受性遺伝子の同定にも近々着手する予定である。得られた結果をもとに、疾患モデルマウスの作成へとつなげていく。
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