脂肪由来幹細胞 (ASC) による乾癬の治療法を確立するため、その評価を行うモデルマウスの作製を行った。さらに既存の治療法として最も効果が高いと考えられる抗IL-23p19抗体を使用してモデルマウスに対する治療を行い、その際のサイトカイン発現量の変化等を確認した。 乾癬モデルとして、C57BL/6Jマウスの背部に対する5%イミキモドクリーム (IMQ) の5日連続塗布により作製される、IMQ誘発乾癬様皮膚炎モデルマウスを使用した。抗体は、IMQ塗布1日目をDay 1としたときにDay 0、Day 2、Day 4の計3回、100 μg/マウスを腹腔内に注射し、Day 6にマウスを安楽死させ、背部の皮膚と脾臓を採取した。 結果として、抗IL-23p19抗体の投与はIMQ塗布による表皮の赤みとフケが抑制した。さらに皮膚のmRNA発現レベルを測定すると、乾癬の病態に深く関わるTh17関連サイトカインであるIL-17A、IL-17F、IL-22、IL-23がIMQ塗布により増加し、抗IL-23p19抗体の投与により抑制される傾向が示された。また、炎症反応のマーカーであるIL-1β、IL-6についても同様の傾向を示したが、ケラチノサイトから主に産生される乾癬関連のサイトカインであるIL-36αとIL-36γについては抑制効果を示さなかった。さらに、IMQの塗布により脾臓が肥大するが、抗IL-23p19抗体の投与は脾臓の肥大に影響せず、抗IL-23p19抗体の投与は部分的に炎症反応を抑制することが示唆された。 これに対してASCは脾臓の肥大を抑制することが報告されており、抗IL-23p19抗体では抑制できない炎症反応についても抑制できる可能性がある。しかし、肥満マウスからのASC採取では脂肪細胞への分化が著しく、必要な細胞数が得られなかったため、ASCの効果の検討には至らなかった。
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