多くのアトピー性皮膚炎患者(AD)やコリン性蕁麻疹患者では汗抗原(MGL_1304)に対する特異的IgEが検出されており、またこれらの患者は真皮内タイトジャンションの不良により汗管から真皮内に汗が漏出することが報告されている。本研究ではADやコリン性蕁麻疹の皮膚内で起こる汗の漏出と同じ状況を再現し、その際の抗原特異的IgE産生の有無を検討した。実際にはヘアレスマウス(HR-1)を用いて、ストリッピングとマイクロニードルによる表皮と真皮へそれぞれ抗原を投与し、その際に生食とヒト汗それぞれに溶解したOVAの感作を検討した。その結果、このマウスでは系統的にIgE産生の検証は困難であったが、真皮感作に於いて汗に溶解したOVAで特異的IgG産生が増強されることが確認された。この結果から汗には抗原感作の際のアジュバント効果の可能性が推測されたので、次にヒトやマウスの表皮ケラチノサイト細胞株をヒト汗で刺激したところ、ある特異的なサイトカインの発現増強とERKのリン酸化を確認した。既知の論文では汗中にはIL-1α、IL-1β、IL-31が検出されることが確認されており、これらのサイトカインがアジュバント効果に関与している可能性がある。 ADやコリン性蕁麻疹では汗管より汗の漏出が確認されていることから、漏出した汗刺激による皮膚内のケラチノサイトや抗原提示細胞などの活性化が起こることで、抗原特異的感作が成立しうる可能性の発端を見出したことになる。 今後はさらにヒトやマウスの系で、ケラチノサイトで増強されたサイトカインと汗に溶解した抗原で抗原提示細胞を刺激することで特異的抗体産生の増強の検討や、汗管バリアのタイトジャンクションに関与するClaudin3 KOマウスを用いた抗体感作実験で、汗漏出と特異的抗原感作の関連を検討していく予定である。
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