特発性後天性全身性無汗症は原因なく全身の発汗を低下させ、発汗による体温調節を障害し、患者のQOLを大きく損なう難治疾患である。 我々は無汗症患者の汗腺組織の遺伝子発現を比較し、嗅覚受容体が患者の発汗部で増加し、無汗部で減少していることを発見した。さらに嗅覚受容体への作用がヒトの発汗に影響を与えることを健常者の発汗試験で確認した。そして試験管内での検討として、嗅覚受容体遺伝子を導入した培養細胞に、嗅覚受容体の作用物質を反応させたところ、活性が示された。これらの結果は、嗅覚受容体を介して発汗の制御ができる可能性を示唆しており、無汗症の治療開発や熱中症の予防に大きく貢献できると考えられる。
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