研究実績の概要 |
頭部血管肉腫は臨床予後が極めて悪い希少な皮膚悪性腫瘍であり、免疫チェックポイント阻害剤は、頭部血管肉腫に対しても有望な治療薬と期待される。免疫チェックポイント阻害剤の効果予測には、その奏効率と正の相関をもつ遺伝子変異量(Tumor mutation burden, TMB) 定量が有用である。本研究ではまず、血管肉腫腫瘍の凍結組織を7検体、パラフィン固定組織を1検体からDNAを抽出し、エクソーム解析を行った。一般的な腫瘍に生じた体細胞変異は、患者の腫瘍組織および正常組織あるいは末梢血単核球のエクソーム解析から得られた変異プロファイルの差分により検出されるが、本研究では正常コントロールの採取が不可能であったため、腫瘍組織の変異プロファイルのみから体細胞変異の検出を試みた。各検体において腫瘍組織に生じた体細胞変異数は想定よりも大きく少なく、DNA抽出に用いた組織に含まれる腫瘍細胞割合が極端に低かったことが考えられた。また腫瘍組織のみからの体細胞変異検出のプロトコルの精度が十分ではなかった可能性が示唆された。これを踏まえ、腫瘍組織のみの利用で解析が可能なIllumina社のTruSight Oncology 500を用いた、包括的遺伝子変異プロファイル解析を行った。この解析で算出されたTMBは平均9.1、標準偏差3.7であった。通常のTMBはエクソーム解析で算出されるため、比較可能に補正すると、本解析で算出された平均TMBは全癌腫のなかでも高いTMBであることが明らかとなった。悪性黒色腫は紫外線暴露により生じる代表的な癌腫であり、そのTMBが非常に高いことが知られており、それらはsignature7という紫外線と関連の強い変異シグネチャを示すことが知られている。本研究では、今後、血管肉腫の発生において紫外線がどの程度関連を示すかを調べるため、変異シグネチャ解析を行う予定である。
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