皮膚の上皮である表皮は、表皮幹細胞によって維持されており、幹細胞での17型コラーゲンの発現低下による皮膚老化の病態が明らかになりつつある。老化モデルマウスであるklothoマウスは、生後4週齢には各臓器の老化症状をきたし、皮膚でも老化症状が確認される。Klothoマウスの病態の本質は、リン排泄障害によるリン貯留である。本研究では、「体内リン貯留による皮膚老化の病態解明」をテーマに、老化モデルマウスであるklothoマウスを用いた解析を進めている。高リン血症による17型コラーゲンの発現低下の過程を明らかにし、高リン血症の改善による17型コラーゲンへの影響と皮膚老化症状の改善の過程を明らかにすることを目的とした。
1.17型コラーゲンのターンオーバーに関与するADAM9とADAM10をRT-PCRで検討した結果、klothoマウスで発現低下がみられた。TIMP1の発現は17型コラーゲンの安定化につながるが、klothoマウスで発現低下がみられた。 2.TIMP1はEGFRが活性化することで発現がみられるが、RT-PCRで検討した結果、klothoマウスでEGFRの発現低下はみられなかった。 3.EGFRのリガンドであるEGFをRT-PCRで検討した結果、EGFの発現を確認できなかった。EGFRのその他のリガンドをRT-PCRで検討した結果、klothoマウスでHB-EGFとTGF-αの発現低下がみられた。 4.通常食で飼育されたマウスから出生したklothoマウスでは、出生時より表皮幹細胞での17型コラーゲンの発現低下が確認される。一方、3週齢で離乳後から低リン食で6週齢まで飼育し、蛍光抗体法で表皮幹細胞での17型コラーゲンの発現を調べた結果、発現が維持された。
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