研究実績の概要 |
ステロイドパルス療法(パルス)を施行した重症円形脱毛症患者を反応良好群(治療1年後に70%以上の再発毛を達成)と反応不良群(再発毛が70%未満)に分類し、そのうち必要なデータが得られた患者10例(反応良好群5例:反応不良群5例)を対象に下記の解析を行った。 ①画像診断 パルス直前およびパルス後3・6か月後のトリコスコピー所見を解析した。代表的所見である黄色毛、断裂毛、黒色点、漸減毛、新生毛につき上記の各時期での頻度を評価したところ、2群間で明らかな差はなかったが、所見の微細な形状・特徴が異なる傾向にあった。例えば黄色点について、毛孔の明らかな開大を伴う黄色点(開大黄色点)、毛孔の明らかな萎縮を伴う黄色点(萎縮黄色点)が存在し、パルス直前は2群とも開大黄色点が認められやすいのに対し、パルス後3~6か月の時点では反応良好群で開大~通常黄色点、反応不良群で萎縮黄色点が顕著となった。この結果は観察される所見の微細構造を評価することで、各所見の頻度に差がでない初期の段階でも予後の予測が可能となることを示唆する。今後さらに症例を蓄積し、統計学的な解析を加える。 ②免疫学的解析 パルス直前の頭皮生検検体を用い、毛周期(成長期・退行期・休止期毛の比率)、毛球部周囲の細胞浸潤の程度、好酸球浸潤の有無、毛球部細胞浸潤部の免疫染色(CD4, CD8, CD56, GranzymeB, CXCR3, FOXP3)の結果を2群間で比較したところ, 反応不良群では良好群に比してFOXP3の陽性頻度が高かった。さらに血清学的評価として上記10例につき順次、パルス直前、直後、翌日の血清中炎症性サイトカイン(IFNγ, IL2, IL6, IL10, IP10)を測定中であり、反応不良群で良好群に比し、IP10が高値となる傾向が確認されている。今後統計学的な有意性を検証するために症例を追加する。
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