研究課題/領域番号 |
20K17328
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研究機関 | 杏林大学 |
研究代表者 |
木下 美咲 杏林大学, 医学部, 学内講師 (40594594)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 円形脱毛症 / トリコスコピー / ステロイドパルス療法 / 超音波 / 免疫学的解析 |
研究実績の概要 |
①ステロイドパルス反応良好群・不良群における自己抗原反応性T細胞頻度の比較:ステロイドパルス療法を施行した急速進行型円形脱毛症患者を反応良好群・不良群に分け、それぞれ治療前と治療後1.5か月後(以下、治療後)に採取した末梢血における毛包自己抗原:trichohyalinに特異的に反応する細胞障害性granzymeB/perforin陽性CD3+CD8+T細胞の頻度をフローサイトメトリーを用い比較したところ、反応不良群では良好群に比して、治療開始前の頻度が優位に増加していたが、治療後では両者に有意な差を認めなかった。この結果より、trichohyalin特異的細胞障害性T細胞の治療開始前の頻度が、パルス治療抵抗性の予測因子になる可能性が示された。 ②高周波超音波を用いた頭皮・頭髪観察条件の最適化:従来、頭皮・頭髪の観察への適応が困難と考えられてきた超音波技術に関して、20mHzの高周波プローベを用い、健常人数名の頭皮を対象に観察条件の最適化を試みた。エコー輝度およびフォーカス深度を最適条件に設定することで、毛包構造を鮮明に描出することに成功した。 ③円形脱毛症患者における重要トリコスコピー所見の頻度の検証:パルス治療前後におけるトリコスコピー所見の変化を検証するにあたり、まず円形脱毛症と疾患関連性の高い重要所見を同定するために、過去に円形脱毛症で報告されているトリコスコピー所見それぞれの感度・陽性的中率を過去報告論文のシステマティックレビューを行うことで算出した。これにより、注目すべきトリコスコピー所見が明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた末梢血プロファイルについては、ステロイドパルス療法の予後予測因子となりうる項目を同定することができた。また画像診断所見については、超音波診断法を患者に適応するにあたって、これまでは困難と考えられてきた毛包の個々の描出に成功した。組織プロファイルについては、2021年度の1年間で追加30症例以上のパルス前の炎症細胞浸潤の程度および成長期・退行期・休止期毛比を測定できた。加えて、当初計画にはなかったが、研究の遂行に重要と考えられる、円形脱毛症と疾患関連性の高い重要トリコスコピー所見をシステマティックレビューにて同定することができた。 以上の成果を考慮すると、計画は総じておおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後、ステロイドパルス療法の予後予測因子になりうる項目をさらに複数同定することを目標に、パルス治療前後でのフローサイトメトリーを用いた末梢血プロファイリングをすすめていく。超音波診断については、設定された最適化条件にて円形脱毛症患者の頭皮を観察し、健常人データと比較することで、炎症性変化の同定や休止期・成長期毛の判別が可能か検証予定である。トリコスコピーについては、円形脱毛症と疾患関連性が高いと判断された所見を対象に、パルス前後での頻度の比較を行う予定である。 上記の検証・解析結果に基づき、パルス療法の予後評価システムの構築を最終的な目標とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた参加学会がコロナ蔓延につき延期もしくはWeb開催への変更となったことで、想定していた学会参加費や交通費に未使用分が生じた。計上していたホームページ更新費や論文投稿費・英文構成費について、会員割引の適応などにより想定していたより安価で済ませることができた。購入を予定していた各種抗体や消耗器具について、前年度に購入し余っていたものを使用することで未使用分が生じた。 次年度に繰り越された経費については翌年度文の助成金と合わせて、延期となっている学会参加費・旅費や追加実験に必要な試薬の購入に充てる予定である。
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