研究課題/領域番号 |
20K17328
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研究機関 | 杏林大学 |
研究代表者 |
木下 美咲 杏林大学, 医学部, 学内講師 (40594594)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 円形脱毛症 / 超高周波超音波 / 3D画像 / トリコスコピー / 病理組織 |
研究実績の概要 |
2022年度は予定されていた研究計画のうち超音波を用いた画像診断所見の解析を中心に研究を遂行した。具体的には、企業協力のもと、超高周波超音波を用い、円形脱毛症患者30名の頭皮より3D化した画像を取得した上で、同画像から頭皮の横断面像、ならびに毛包の長軸に沿った縦断面像を再構成し、毛包の構造を捉えられていることを確認したうえで、病勢や重症度に関連しうる特徴的所見の有無を解析した。結果、毛包漏斗部における逆三角状の低エコー領域(inverse triangular hypoechogenicity: ITH)、毛包峡部での卵円形高エコー領域(hyperechogenic ovoid structures; HOSs)、脂肪織内の毛包周囲高エコー領域(perifollicular hyperechogenicity in subcutis: PHS)など、トリコスコピーに代表される従来の非侵襲画像検査では感知しえない特徴的所見を捉えることができた。さらにこれらの所見のうち、ITHやPHSは急性期の円形脱毛症、中でも急速進行型円形脱毛症において高率に確認されるのに対し、HOSは慢性化した難治性の患者で顕著となることが判明した。PHSについては研究者らの過去報告において毛包周囲の炎症細胞浸潤を表すことが示唆されているが、ITHやHOSsは過去に報告されていない所見である。これらの所見を説明しうる病理組織像も報告されていないことから、ホルマリン固定標本では正確に評価されてこなかった毛包内の皮脂貯留や破壊毛包の遺残などを捉えている可能性を考慮した。これらの所見は円形脱毛症の病勢や病期と相関し、治療反応性を予測するバイオマーカーになりうる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は当初2022年度を最終年と予定していたが、研究代表者の産休・育休取得により中断期間が生じたため、1年間の延長の申請を行い承認をいただいた。したがって2023年度まで継続予定である。上記の事情につき、研究の遂行に一時的な遅れが生じたが、一方で代表研究者の復帰後、超音波画像取得については、将来的な目標として想定されていた3D画像の集積および解析まで進めることができた。従って、総合的に考えて研究計画は順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
3D化した超高周波超音波画像の解析により新知見につながりうる所見が得られたため、統計学的な解析を行うに十分な症例数の確保を目指す。さらに、所見と病態との関連を正確に評価するために、得られた病理組織像と超音波所見との比較検討をすすめる。2023年度は本研究の最終年度となるため、当初予定していた予後評価システムの構築を目指し、症例数を増やしながらも随時、統計学的解析結果をアップデートしていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、超音波技術の構築やその解析に必要として計上していた物品費について、実際は物品のほとんどが企業協力により無料で供給されたため、出費を大幅に抑えることができた。次年度使用分については、研究成果を発表したり、研究に必要な情報を得るための学会参加(特に国際学会)や、論文投稿およびオープンアクセス化に必要な費用として使用することを計画している。
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