2023年度は主に取得した画像の解析を継続した。ひろく皮膚科学用途での微細構造描出のため共同研究開発中の3Dエコーを利用し、2022年度までに行った円形脱毛症患者の画像で、いくつかの特徴的所見を検出することに成功したため、2023年度はこれらの所見が予後と関連するかについて解析した。具体的には、毛包漏斗部における逆三角状の低エコー領域(inverse triangular hypoechogenicity: ITH)、毛包峡部での卵円形高エコー領域(hyperechogenic ovoid structures; HOSs)、脂肪織内の毛包周囲高エコー領域 (perifollicular hyperechogenicity in subcutis: PHS)について、所見が得られた時点から3か月後の臨床像の改善をもとに、予後良好群・不良群に分け、それぞれの所見の有無と発毛の有無の関連を解析した。結果、慢性期円形脱毛症患者で高頻度に観察されていたHOSsについて、同じ慢性期においても所見を有する患者は有さない患者に比して有意に予後不良となる確率が高くなることが判明した。また、ITHを有する患者は有さない患者にに比して予後良好となる確率が高かった。これらの結果から、トリコスコピーを代表とする既存の画像技術ではとらえられないエコー所見の検出により治療反応性を事前に予測できる可能性があることが示唆された。 またステロイドパルス療法を施行した急性期の重症円形脱毛症患者について、これらエコー画像所見を参考に、治療反応群と不良群に分けて治療前、治療後のT細胞プロファイルデータを解析したところ、治療反応性と関連するCD8+T細胞サブセットの同定につながった。
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