研究実績の概要 |
本研究は、環境因子のメラノーマ腫瘍内微小環境に与える影響を、腫瘍随伴性マクロファージ(Tumor-associated macrophages: TAMs)を中心に解析した。当該研究期間中、環境因子による刺激が有棘細胞癌や乳房外パジェット病など皮膚腫瘍内のLL37を増加させ、TAMsを介して腫瘍内微小環境のIL-17関連因子を増強することを明らかにした(Sato et al. Front Immunol 2020)。また、メラノーマ組織内のLL37発現はメラノーマのTステージに依存して陽性細胞が増加することが明らかとなった。上記の知見に基づきLL37のTAMsに与える影響を検証した。初めにマウスB16F10メラノーマモデルを用いて腫瘍内にCRAMP (mouse LL37)を局注し腫瘍内のmRNA発現をケモカイン、血管新生因子を中心に網羅的に検証した。その結果CRAMPは腫瘍内のMMP1, MMP9, IL-23p19のみ有意に増強することが明らかとなった。次にLL37のメラノーマ細胞への影響をヒトメラノーマ細胞であるA375, G361を持ちいいて検証した。結果、LL37はメラノーマ細胞においてMMP9、IL-23p19のmRNAの有意な増加を認めた。単球由来M2マクロファージではLL37刺激によりVEGF-CおよびMMP1のmRNAの有意な増加を認めた。以上の観点から、本研究によりLL37はメラノーマ細胞側では主に重複型血管新生と繊維化に、TAMsには局所コラーゲン融解による局所浸潤と発芽型血管新生に関与することが明らかとなり、メラノーマの腫瘍局所浸潤のメカニズムが明らかとなった。
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