研究課題/領域番号 |
20K17339
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
齊藤 明允 筑波大学, 附属病院, 病院講師 (70830181)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 慢性移植片対宿主病 / 皮膚硬化 / 皮膚線維化 / IFNγ / TGFβ |
研究実績の概要 |
①角化細胞に対する特異的免疫機序により皮膚硬化が生じるモデルマウスの作成(慢性移植片対宿主病用皮膚硬化モデルマウスの確立) 角化細胞特異的に発現するケラチン14プロモーター下に卵白アルブミン(OVA)遺伝子を導入して角化細胞膜上にOVAを発現させたK14-mOVA Tgマウスをレシピエントとし、OVA特異的なT細胞受容体を有するCD8 T細胞であるOT-I細胞をドナー細胞として養子移入することで、皮膚線維化を伴う皮膚硬化が生じることを確認。 ②慢性GVHD様皮膚硬化モデルマウスの皮膚硬化におけるIFNγは病態形成に重要である。 慢性GVHD様皮膚硬化モデルマウスにおけるIFNγの役割を検討するために、ドナーマウスとして、GFPを遺伝子導入した、野生型OT-IマウスとIFN-γ欠損 OT-Iマウスを作成する。それぞれのドナーOT-I細胞をレシピエントK14-mOVA Tgマウスに移入し、両群を比較したところ、IFN-γ欠損 OT-Iマウス移入群では皮膚硬化が軽度で、耳介皮膚HE染色検体での真皮厚、耳介皮膚検体でのαSMA陽性筋線維芽細胞数、耳介皮膚検体のハイドロキシプロリン含量は低かった。また、耳介皮膚のコラーゲン、αSMA、Col1a2およびTGFβ1のmRNA発現が有意に低下していた。さらに耳介皮膚の表皮角化細胞のみを単離し、そのTGFβ1の発現を比較してもIFN-γ欠損 OT-Iマウス移入群で低下していた。 ③表皮角化細胞死は慢性GVHD様皮膚硬化の発症に重要である。 以前、表皮角化細胞死を誘導しないことを報告した、GzmB欠損OT-I細胞移入マウスと野生型OT-I細胞移入マウスを比較すると、GzmB欠損OT-I細胞移入マウスでは皮膚線維化を伴う皮膚硬化が生じなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験は順調に進んでおり、当初見込んだ結果を期限内に達成できる見込みあり。
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今後の研究の推進方策 |
研究実績で報告した②③より、慢性GVHD様皮膚硬化の発症には、皮膚におけるTGFβの発現が直接引き金となっていることがわかり、さらに表皮角化細胞からのTGFβの発現が重要なソースのひとつである。それには表皮角化細胞死とドナー由来のIFNγの刺激がともに重要であることが示唆された。今後は、培養マウス表皮角化細胞に細胞死誘導物質を添加し、ネクローシス、アポトーシスやネクロプトーシスを誘導する。そこにIFNγを添加するものとしないもので、TGFβの発現を比較する。また、ヒト急性GVHD、慢性GVHDの皮膚標本を用いて、TGFβ1の発現を比較検討する。
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