研究課題/領域番号 |
20K17340
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
内山 明彦 群馬大学, 医学部附属病院, 助教 (90760538)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 急性期褥瘡 / 皮膚虚血再灌流障害 / SOX2 / 酸化ストレス |
研究実績の概要 |
褥瘡は高齢化社会におけるリスクの高い疾患であり、急性期(紅斑・紫斑期)を経て慢性期(潰瘍形成期)に到る。これまでに皮膚科領域では褥瘡に対する治療として、既に発生してしまった創傷(潰瘍)に対する外用剤、被覆材の開発に重点が置かれていたが、難治や再発を繰り返す症例が多く、重篤な感染症により致命的な経過に至ることもあるため医療界ならびに社会的問題となっている。一方、潰瘍形成前の急性期褥瘡(紅斑・紫斑形成期)に対して、本邦および世界的な褥瘡治療ガイドラインでは除圧や注意深い経過観察の記載があるのみで、その後の潰瘍形成を防ぐ有効な治療は未だ確立されていない。そのため急性期褥瘡における病態解明および潰瘍形成を防ぐ治療などの開発が望まれている。 申請者はこれまでに皮膚虚血再灌流障害(急性期褥瘡)の病態において酸化ストレスや血管傷害が重要であり、それらを抑制することでその後の皮膚潰瘍形成を予防できることを見出した。また、申請者は皮膚表皮細胞に発現せず、口腔粘膜上皮に発現する転写因子SOX2が、皮膚の創傷と比較して口腔内の創傷を早期に治癒させる能力を有していることを明らかにした。さらにSOX2を皮膚表皮細胞に発現させることで難治性皮膚潰瘍へ治療応用できる可能性についても明らかにした。しかし、転写因子SOX2における皮膚虚血再灌流障害(急性期褥瘡)および酸化ストレスの制御機構については未だ明らかとなっていない。 本研究では皮膚表皮細胞に発現させたSOX2が皮膚虚血再灌流障害における潰瘍形成、酸化ストレスや血管傷害、炎症性サイトカインや炎症細胞浸潤を制御する機序を明らかにし、今後の臨床応用の基盤となる研究を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
表皮細胞特異的にSOX2の発現をタモキシフェン投与下で誘導できるK14CreERTM/LSL-SOX2(TG)マウスを用いて、コントロール群とSOX2発現群で磁石を用いた皮膚虚血再灌流障害後に生じる潰瘍形成の比較、検討を行った。SOX発現群ではコントロール群と比較して虚血再灌流後に生じる潰瘍が抑制された。さらにSOX2発現群では虚血再灌流部位におけるアポトーシス細胞や血管傷害がコントロール群と比較して減少していた。さらにSOX2マウスと酸化ストレス可視化マウス(OKD48-Luc)の掛け合わせを開始し今後新たに生まれたSOX2/OKD-48マウスを用いて酸化ストレスに関する評価を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
マウス初代表皮細胞の実験系において酸化ストレスに対するSOX2の影響を検討を行う(in vitro)予定である。表皮細胞に過酸化水素刺激を行った状態での活性酸素種(ROS)の定量、酸化ストレス関連遺伝子(Nrf2, HO-1, NOX2など)の発現量、アポトーシス細胞数、炎症性サイトカイン(TNF-α、IL-6、IL-1βなど)の発現などを免疫染色やreal time PCR法、フローサイトメトリー法などを用いて検討する。また、虚血再灌流後の皮膚組織からRNAを採取し、RNAシークエンス法を用いた遺伝子発現の比較をコントロール群とSOX2発現群で行う。SOX2が皮膚虚血再灌流障害において制御する遺伝子ネットワークおよびパスウェイ解析を行い、SOX2のターゲット遺伝子を同定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品の在庫があり、予定していた血清や抗体などの購入を行わなかったため。
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